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SAO−銀ノ月−
「……プレゼントは、照れます」
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り続け、気づけば浮遊城でも指折りのランナーになった。

「へぶっ」

 転んでしまう。初めての長距離走に足がもつれてしまい、顔から地面へとダイブして乾いた地面に倒れ伏した。状況を知らない者が見れば、まるで行き倒れの死体のようだったが、プレミア本人は至って真面目だった。

「どうして誰もいないのでしょう」

 そのままプレミアはぐるりと回転して空を見上げた。先日、ピナに掴んでもらって飛んだ空はやはり大きく、転んで泥を被ったこともあって少し落ち着くと、ショウキを倣ってゆっくりと息を吐いた。ここアインクラッド第22層は、地上にモンスターがいないことが有名であったが、もちろんプレミアはそんなことを知るよしもない。

「君……大丈夫か?」

 そんな大地に寝転がるプレミアの視界に、突如として男のプレイヤーが広がった。大空を覆い尽くすような白髪の姿に、どれだけ巨大なプレイヤーなのかと錯覚するが、プレミアが立ってみればその背丈はもちろん巨人ということはなかった。

「大丈夫です。少し転んでしまって」

「これはひどい……ほら、これで拭きなさい」

「ありがとうございます」

 丁寧にも布巾をプレミアに渡してくれた男プレイヤーは、仮想世界では珍しい老人の姿そのままといったプレイヤーだった。種族の特徴らしい特徴はどこにもなく、プレミアが話に聞く現実世界の姿のようだった。

「……このアバターが気になりますかな?」

「はい。わたしと違います」

「ははは。まあ……昔いたところで少しありましてな。それより、その……もう少し隠しなさい」

「はい?」

 プレミアがタオルで身体を拭きながらも、ジロジロとプレイヤーの方を見ていたのが気になったのか、老人プレイヤーは朗らかに笑いながらも話をそらす。さらにプレミアが服の下をめくりながら拭いていると、老人が周りを見渡しながらリズのように注意がしてくれて、この人は『いいひと』です、とプレミアは考える。

「ありがとうございました。それと一つ聞いてもよろしいですか?」

「はあ……私でお答えできることであれば……」

 そうして『いいひと』と判断した老人に、プレミアは今までのことを簡単に説明する。お世話になっている恩人に誕生日のプレゼントをしたいのだが、あいにくと時間もお金も目当てもなく、どうすればいいか走り回っていたと。それで転んだと。

「なるほど……時にそのご仁、魚は好きですかな?」

「はい。一緒に食べたこともありますし、生ではダメだと教えてくれました」

「そ、そうですか」

 最近の若い者は分かりませんな――という言葉を小さくボヤキながらも、老人プレイヤーはプレミアの興味津々、どんな名案が飛び出すのかとワクワクしていることが見てとれる輝く目つき
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