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SAO−銀ノ月−
「……ショウキは……『ずるい』です……」
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だ。

「ショウキさん! 私も行きます!」

 そうしてショウキはキリトから翔んできたユイを回収しながらも、背後を振り向くことなく聖堂の中に飛び込んだ。聖堂の内部はまるで神殿のような広大な空間となっており、外にいる仲間からの援護は期待できそうにない……と同時に、外のフォールン・エルフたちからの邪魔は入らない。

「いました! あそこです!」

 そうしてプレミアがいたのは、聖堂の最奥、《聖大樹》が鎮座する神殿だった。フォールン・エルフたちは聖大樹の恵みは受けていないと聞いていたが、巫女プレミアの力の発現のためには必要だったのだろう。聖大樹に向けて祈りを捧げ続けるプレミアの背後に、決心しつつゆっくりと着地した。

「プレミア」

「何のご用ですか」

 ショウキの呼びかけに振り向くこともせずに、プレミアは冷たい声で返した。まるで最初に会った時みたいだな、とショウキは内心で苦笑しながらも、さらに言葉を続けていく。

「プレミアは、どうしたいんだ?」

「はい。エルフと、わたしの故郷を蘇らせます」

「…………!?」

 ユイが肩の上で絶句する音が聞こえてきたが、ショウキからすれば予想通りの反応だった。いや、この場に来て当たりたくない予想が当たってしまったというべきか、プレミアがこの場にいる時点でわかっていた。

 プレミアが自らの意思でフォールン・エルフたちに従っているということを。

「なんでだ?」

「わたしがNPCだからです。そういうクエストを、人間はわたしに作ったのですから」

「でも……!」

 ショウキたち人間が、NPCである自分にそうした使命を植えつけたのだろうと。そう語るプレミアからは、やはり人間にはなれないという絶望が感じられて。口を挟みかけたユイを制止しながら、ショウキはさらに言葉を投げかけた。

「でもプレミア。それじゃお前と、この世界は壊れる」

「それは……仕方のないことです」

 かつてアイングラウンドを巫女の命をとして浮遊城にしたように、逆のことをしようとしている今回も、浮遊城と巫女プレミアの命は消え去るだろう。とはいえそこまで知っていたのか、プレミアは一瞬だけ言い淀むものの、すぐに仕方ないと断じてしまう。

「いや、俺は困る。この世界を好きなやつがいるんだ」

「…………」

「何でもないご飯に目を輝かせて、たまにボケたことをやらかして自分にショックを受けて、新しいことを覚えると胸を張って、友達を大切にする……優しいやつなんだ」

 あの日、プレミアを拾って今まで様々なことがあったけれど。それら全てが何でもない日常という、とてもすばらしい毎日だった。特に何があるわけでもないが、日々を楽しく過ごさせてくれた。そう思い返していれば、さらに続く言
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