100話:第三次ティアマト会戦(決着)
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ここまで一方的な展開になるとは......。
「承知しました。一時間をめどに撤退に移ります。閣下、このようなことになり申し訳ございません」
「最終的な決断をしたのは私だ。あまり気に病むな。それとシトレに謝っておいてくれ。後を頼むと伝えてくれればありがたい。ではな」
うつ向く私を見ていられなかったのだろう。ロボス提督は私の敬礼を待たずに通信を終えられた。それから一時間、なんとか次鋒の位置にいたパストーレ艦隊の一部と合流し、撤退を開始した。
「閣下、最後尾の艦から入電。ロボス艦隊の旗艦アイアースの反応が消失したとのことです」
既に分かっていた事だが、これで大敗が確定した。『アイアース』が轟沈ないし降伏した以上、包囲下にあった艦隊は絶望的な状況だろう。これからの事に思考が向かいそうになって考えるのを止めた。身を挺して脱出させてくれたロボス閣下の為にも、まずは残存兵力をエルファシルまで連れ帰ることに集中すべきだ。おそらく軍法会議で敗戦の責任を問われることになるだろうが、今、そんな事を考えても仕方がない。
「皆、ショックを受けているだろうが、艦隊司令部が暗い顔をしていては、艦隊全体が沈んでしまう。笑えとは言わないが、せめて毅然とした態度をとろうではないか」
どんよりとした雰囲気に包まれた艦隊司令部全体に聞こえるように、私は声を上げた。ロボス閣下の遺訓だ。せめてそれ位は果たして見せねば顔向けができない。そしてシトレ元帥への伝言もお伝えするまでは死ぬ訳にはいかないだろう。少し雰囲気が変わり始めた司令部を見回しながら、そんな事を考えていた。
宇宙歴796年 帝国歴487年 4月上旬
イゼルローン回廊 同盟側出口付近 分艦隊旗艦ブリュンヒルト
ジークフリード・キルヒアイス
「ラインハルト様、戦功分析書がまとまりましたのでご確認をお願いします。艦隊所属の兵たちも『ティアマトの雪辱ができた』と喜んでいる様子です」
「そうだな。これが『第三次ティアマト会戦』になるのだから、確かに雪辱したことになるな。リューデリッツ伯にもお喜び頂ければ良いが......。そういえば兵たちの慰労に使うように伯から資金を頂いていたな。分艦隊司令として初陣でもあったし、礼を兼ねて兵たちの慰労をしたいところだが、祝勝会でもやるべきだろうか?」
「『慰労』する事に関しては賛成でございますが、『祝勝会』というより、酒代をこちらで負担する形がよろしいのではないでしょうか?兵たちも身近な僚友とまずは勝利を祝いたいでしょうし」
「そうだな。確かに『上官』との会食は何かと気を使うものだし、正式な祝勝会は開催されるだろうし、その方がよさそうだ。『前線総司令部』に帰還するまでにその旨の広報と手配を頼む」
了承の旨を伝え、執務室を後にしよう
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