「少しお話ししませんか?」
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、幸いなことに楽しい冒険だったことがうかがえる。ユイとともにガーネットというプレイヤーと出会い、ともにモンスターを倒しながら町にたどり着き、《リトルネペント》との戦いで罠にはまりながらも三人で突破して。それから――
「ルクス?」
「はい。グウェンもです」
ルクスとグウェンという、ガーネットが喧嘩別れしたという友達当人に助けられ、ガーネットとグウェンは仲直りが出来たという。世間は狭いな、と苦笑するショウキをよそに、プレミアの話は続いていく。
「それでガーネットと友達になれました。また一緒に冒険に行く約束をしたので、ショウキも是非」
「ああ。よかったな、友達が出来て」
「……はい。そうなんです。そのはず、なんです」
そうして今日のちょっとした冒険を語り終えたプレミアだったが、ショウキの応答を境にして、その表情は話している間とは違って深く沈んでいた。自身のワンピースにシワができるほどに強く握りしめ、まるで心臓発作でも起きたような様相に、ショウキは慌てて立ち上がった。
「プレ――」
「大丈夫です。身体が苦しいわけではありません。『こころ』が……苦しいんです」
どうした、とショウキが問いかけるより早く、プレミアは苦しみながらも自身に何が起きているかを語りだした。その表情は、いつも無表情の中に小さく笑みや不満を覗かせる、普段のプレミアの表情ではなかった。
「わたしは、皆さんが大好きです。皆さんと友達になれて、とても嬉しいんです。ですが、わたしは……『にんげん』じゃないんです」
「…………」
「いくら皆さんが大好きでも、違うんです。住んでる世界も、考えてることも……いくら『にんげん』について学んでも、わたしは……!」
プレミアは人間ではない。ショウキたちにとっては忘れがちなことだったが、今のように仮想世界で一人きりになるプレミアは違う。どうしてもショウキたちは違う世界たちの住人であり、あくまでプレミアの住む世界はゲームなのだと実感してしまう。そこまでショウキが思い至れば、プレミアは涙を流しながらショウキにしがみついた。
「おねがいします……今までのおねがいが、なにもかもなくなってもかまいません。これが最後のおねがいです。わたしを、わたしを――」
――『にんげん』にしてください。
「それは……」
腰にしがみついた少女からの、絞り出したような声にならない声。今までの願いも、これからの願いもいらないと言いきるほどの、少女の全てを賭けた願い。
「……無理だ」
ただしショウキに、その願いを叶えてやる力はなく。彼に出来ることは、ただ残酷な事実を伝えることだけだった。
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