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黒い機関員
第五章

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「助かりたい奴はこのボートに来い、店員があるがな」
「そのボートに乗ればいいのか」
「そうしたら助かるの」
「そうだ、助かりたいならだ」
 それならというのだった、ここでも。
「ここまで来い」
「そうしたいならか」
「自分でっていうのね」
「そうすればいいんだな」
「そこまで行けば」
「そうだ、そうしろ」
 こう言って人々を待つ、すると乗客も船員達もだ。
 ボートに向かった、シャインは彼等に一切手を貸さず自分達で助かる様にした。そうしていたのだが。
 一人の青年には手を貸してボートに引き揚げた、そうして彼に言った。
「助かってよかったな」
「俺は助けてくれるのか」
「御前は別だ」
 アッシュには微笑んで言うのだった。
「友達だからな」
「だからか」
「友達でない奴はどうでもいい」
「自分で助かれか」
「そうだ、しかしな」
 友人であるアッシュはというのだ。
「御前は別だ、だからな」
「助けてくれてか」
「そうだ、一緒にアメリカまで戻ろうって言ったな」
「それならか」
「アメリカまで戻るぞ」
「そうするか」
「それで美味い酒を飲もうな」
 シャインはアッシュに笑って言った。
「そうしような」
「それじゃあな、しかしだ」
「どうしたんだ?」
「いや、かなり死んでそうだな」
 アッシュは沈もうとしているタイタニック号を見つつこうも言った、上着を脱いでそうしてその服を絞って海水で身体が冷えない様にしている。アッシュと同じく。
「この事故でな」
「そうだな、二千人以上乗っていたけれどな」
「どれだけ助かるかだな」
「わからないな、しかし結局こうした時はな」
「自分次第か」
「そうだ、他の奴の助けを借りるよりもな」
 それよりもというのだ。
「まずはな」
「自分で何とかすることか」
「自分の命は自分のものだろ」
 アッシュも沈もうとしている船を見ている、そのうえでの言葉だ。
「そうだな」
「ああ、だからだな」
「助かりたいならな」
 そう思うならというのだ。
「自分でな」
「何とかしないと駄目か」
「俺がそう考えるからな」
「何といってもか」
「自分で何とかしろ、俺はそうしてきたしな」
「今回もそうしたか」
「御前もな、あと御前最初何処かに行ったな」
 アッシュは彼が最初何処かに行ったことについても尋ねた。
「何処に行ったんだ」
「ああ、そのことか」
「そうだ、何処に行ったんだ」
「いや、店のバーのバーボンでいいのを見かけていてな」」
「それを探していたのか」
「それで持って行こうと思ったらな」
 高級バーの上等の酒をというのだ。
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