第二章
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「これはだ」
「はい、何か企んでおられますね」
「斉王様も」
「そうされていますね」
「間違いないな」
秦王も家臣達に深刻な顔で応えた。
「さしあたっては」
「それがしですか」
「そうだろうな」
その尉遲恭を見ての言葉だ。
「そなたは余の護衛もしておる」
「そのそれがしを除いて」
「いざという時にだ」
まさにその時にというのだ。
「余を消しやすくするつもりなのだろう」
「やはりそうですか」
「あ奴は昔から頭は悪いが悪知恵は働く」
弟である彼についてだ、秦王はこう言った。
「だからまずはお主をだ」
「そうお考えなのですか」
「それでだが」
秦王はさらに言った、切れ長の目にしっかりとした顔立ちで髭も威厳がある。全体的に整った顔立ちで背もわりかし高く背筋もしっかりしている。
「あの者は特に槍が得意だ」
「まさに天下にそうはいないまでの」
「腕前だ、その槍でだ」
「それがしをですな」
「お主は素手で槍を奪って自らのものにすることが得意だな」
「はい、それも武芸の一つなので」
「ならばおあつらえ向きだ、それを見せてもらいたいと言ってだ」
そうしてというのだ。
「お主を除こうとするだろう」
「左様ですか」
「お主を失う訳にはいかない」
秦王は尉遲恭に強い声で言った。
「だからここはだ」
「宴にはですか」
「出ない方がいい」
こう言うのだった。
「病と称してな」
「いえ、それには及びませぬ」
尉遲恭は自身の主に笑って答えた。
「それがしも宴に出ます」
「よいのか」
「はい」
尉遲恭は秦王に毅然として返事をした。
「ご安心下さい」
「あの男は戦自体は下手だがな」
危機になれば兵も見捨てて逃げている、唐の皇室である李家の拠点と言っていい延安が攻められた時にそうしたのだ。この時の失態は秦王はよく覚えている。
「しかし武芸の腕はいい」
「特に槍が」
「その槍は確かに見事だ」
「はい、しかしです」
「この難を乗り越えてみせるか」
「そのことをお見せします」
尉遲恭の返事は淀みがなかった、そしてだった。
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