十八 等価交換
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いという事が窺える。
彼の鈴の鳴るような澄んだ声は、一度聞いたら忘れられないほどなのに、まるで何か薄い垂れ幕に阻まれているかのように、曖昧模糊としたものだった。
声は特徴の一つのはずなのに、男とも女とも、または子どもの声にもとれる。
それでいて、どこかで聞いたことのある声なのだから、いのは内心、戸惑いを隠せなかった。
これがもし、サソリが彼を『ナルト』と呼んでいたならば、いのは記憶の底から、かつてナルへの見舞いの品である花を買いに花屋に訪れた少年の事を思い出しただろう。
デイダラのように『ナル坊』という呼び名でも、中忍試験で出会ったあの不思議な少年の顔を思い浮かべたはずだ。
だが、あいにくサソリの『坊』という呼び名だけでは、目の前の人物が以前会ったうずまきナルトと結びつけることは、いのには難しかった。
地に伏せるチヨと、傍らにいるいのに、ナルトは視線を奔らせる。
山中いのだと知っていながら、素知らぬ顔で「木ノ葉の忍びか…」とフードの陰で彼は青い双眸を細めた。
「『木ノ葉崩し』の主犯だった大蛇丸の情報が欲しいのか?」
「なにを言って…っ」
いきなり核心を衝かれ、いのは動揺する。警戒して身構えるその肩が一瞬跳ねた。
いのの本来の目的は、うちはサスケと春野サクラの居場所。
里抜けした彼と彼女が今、身を寄せている大蛇丸の居場所を突き止める為に、サソリから情報を引き出そうとしている事実を把握していながら、ナルトは涼しい顔で言葉を続けた。
「サソリから執拗に何らかの情報を手に入れようとしているのは、一目瞭然だった。大蛇丸は元『暁』であり、サソリと組んだこともあるからな…」
「俺はあんな蛇ヤローより坊と組みたかったのだがな…」
サソリの小さな呟きに気づかず、ナルトは「以上から、『木ノ葉崩し』で亡くなった三代目火影の敵討ちをする為に大蛇丸の情報を得ようとしているのだと踏んだのだが…?」としれっと訊ねる。
あえて、サスケとサクラには触れずに、いのが大蛇丸の情報を手に入れようと必死な訳を、もっともらしい理由をつけて、ナルトはでっち上げた。
ナルトの話を聞いて、「そうか…やはり三代目火影はあの時の事件で…」とチヨがしみじみ呟く。
サソリもまた「噂では聞いていたが…」と三代目火影の死を確信した。
それこそがナルトの狙いだとも知らずに。
砂隠れの里だけでなく『暁』にも、三代目火影である猿飛ヒルゼンの死を広める事で、実際は彼が生きているという真実を覆い隠す。
さもないと、木ノ葉病院の最奥で秘密裏に収容されているヒルゼンの命が危ないからだ。外堀は埋めておくに限る。
なにやら納得している風情のサソリと、急に
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