十八 等価交換
[1/6]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
瓦礫の山の上で、純白の衣をたなびかせる存在。
それは荒れ果てたこの地に君臨する、王者の如き気高さと、空気に溶け込むほどの透明感を秘めていた。
(──誰じゃ…?)
サソリといのの間に割って入ってきた人物。白いフードで顔を覆い隠した彼を、チヨは眼を凝らして見つめた。
霞む視界に映る白は眩く、戦場と化したこの場に相応しくない。だが妙な事に、一際目立つであろう純白は希薄さえ感じられた。
第三者である彼が纏う雰囲気。
一言であらわすなら【無】だ。
まるでその場に存在していないのかと見間違いそうになりながらも、研ぎ澄まされた気配が感じ取れる。
同時に、本当に存在しているのかどうかすらあやふやな透明感と、この場の全てを制するほどの威圧感という矛盾さを抱えていた。
チヨは警戒しつつ、いのとサソリの戦闘を邪魔した不届き者を観察する。
いののせっかくの勝機を不意にした事から、相手がサソリの味方である事が窺える。
なにより、純白の外套とは対照的な黒い裏地に描かれた紋様が、自分達の敵だという事を露わにしていた。
赤い雲。
風影の我愛羅を攫った『暁』の証拠であるソレに、チヨは内心焦燥する。
いのはもはや限界だ。緻密な作戦を立て、全力を出し切っての攻撃が全て水の泡となったのだ。
条件反射で、サソリと、謎の相手から距離を取っているものの、動揺のあまり、立て直すのは難しいだろう。
体勢しかり計画しかり。
(ならば、わしがなんとかするしかあるまい…)
チヨはチャクラを練って、糸を再び『父』と『母』の人形に結び付けようとしたが、不意に立ち眩みを起こす。
拍子に、懐から『父』『母』を口寄せした巻き物が懐から転がり出た。サソリの毒の影響から、チャクラが上手くコントロールできず、傀儡二体が白煙をあげて、勝手に巻き物へ戻ってしまう。
「……ぐ…ッ」
サソリに刺されたワイヤーの毒が、じわじわと身体の自由を奪ってゆく。
脂汗を掻きながら、チヨは地面に膝をついた。
「チヨ婆さま…っ!」
背後を振り返ったいのは、チヨの青褪めた顔を認めて、眉を顰める。気遣わしげな視線をチヨに向けながらも、彼女の全神経は謎の人物に注いでいた。
サソリに勝てる唯一の機会。
それをふいにした相手だが、何故か憎いとは思えなかった。
むしろ、妙な事に懐かしさすら覚えたが、誰なのか全く思い出せない。
「おせぇぞ…坊」
「約束していたわけでもないだろうに」
サソリの非難めいた言葉に、謎の第三者が苦笑を返す。
チッ、と舌打ちしたサソリのほうが押し黙った事からして、力関係は彼のほうが上なのだろうか。
しかしながら『坊』という呼び名から、謎の第三者がサソリより若
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ