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ダン梨・F
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品を買ってはいない。
 理由は二つ。
 一つは名前が絶望的にダサくて流石に躊躇したこと。
 もう一つが、ヴェルフの防具は俺にとっては80点止まりの評価なのだ。

 ベルは前衛でガンガン突っ込むのが仕事ではあるが、いわゆるタンクではないので機動力は求められる。機動力と前衛を張るための防御力、それを両立させるのにヴェルフの防具は丁度いい。ベルにとっては100点に近いだろう。
 しかし、俺にとってヴェルフの防具は若干重く、若干大きい。その辺の安物より遥かにいいのは確かなのだが、俺の求めるベストとは逸れている。
 まぁ、それは彼の売る防具がハンドメイド品であるからであって、オーダーメイドできれば多分100点の防具とか作ってくれそうな気はする。

 ともかく、ベルが連れてきた一時契約の鍛冶屋というのが今の俺にとってのヴェルフ・クロッゾだ。彼は便利鍛冶屋ではないし、他所の冒険者だ。あちらにとってもそうだろう。だからそんな距離感で一緒にダンジョンに籠っていると、不意にヴェルフがぽつりと呟いた。

「………なんというか、聞いてたより全然普通だな、お前」
「え?俺になんか変な噂でも?」
「フリーダムで人をおちょくりまくるとか、ノリでとんでもないことをしているようで悪代官ばりの壮大な悪巧みをしてるとか色々だ」
「俺の悪評を流すヤツ。一体何ル・クラネルと何ルカ・アーデなんだ……」

 ちらっと目をやるとリリはあさっての方を向き口笛を吹き、ベルは満面の笑みで「誰なんだろうね!」と開き直ったとしか思えない態度でしらばっくれている。まぁ別に責める気はないのだけれど。俺とお前の仲だもの。
 とはいえ、少々の誤解があるなら言っておこう。

「ベルとは気が知れた仲だからおちょくったりするけど、ダンジョン内であんまフザケすぎると死ぬからな。真面目にやるさ。それに悪だくみっつったって、後でファミリアが得する話を考えてるだけだし。俺程度の悪知恵、他のファミリアだって多かれ少なかれ働かせてるもんだ」

 いやいやお前初代ミノたんに追われてたとき漫才やってたろって思うかもしれないが、あれだってベルの思考がテンパりすぎないよう誘導していることと、長い付き合いでの理解が互いにあったからあれをやっていた。リリ発見時にヤンチャした件は多少転生者知識に頼った面はあったかもしれないが、先に仕掛けてこようとしたのに対して迎撃の姿勢を見せたうえで、トンズラを防いだだけだ。そこまで変なことではない。
 俺の回答にヴェルフは「そういうもんか」と大して気にした様子もなく納得したようだった。



 = =



 ヴェルフはバミューダ・トライアングルについてよく知らない。

 断片的には知っている。ベルとは兄弟同然に育った同郷であること。ベルと違って手先が器用
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