第五章
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「絶対に無理だよ」
「ペナントあれだけ強かったじゃないですか」
「それでも無理だよ、まあ見てろ」
「今年の阪神昭和六十年の時より強いですよ」
「バースいねえだろ」
このことが決定的な違いだというのだ。
「バースいたら流石に日本一になるかも知れないけれどな」
「バースいないからですか」
「ああ、星野や金本だけじゃ無理だ」
阪神を日本一にすることはというのだ。
「絶対にな」
「そうなりませんよ」
「じゃあこれから観るんだな」
駒込は余裕を以て中西に言った、中西はこの時遠洋航海から帰って暫く経っていたがその彼にとって最高のニュースだった。
だがその最高のニュースも日本シリーズで。
第七戦で負けた、それで中西は残念な顔になったが。
携帯に電話がかかった、出ると駒込のもので。
「よお、今負けたな」
「はい、日本一になれませんでした」
「そうなったな」
「これで百万円は」
「ああ、こうなるってな」
「最初からですか」
「わかっていたんだよ」
駒込にとってはだ。
「もうな」
「そうですか」
「ああ、だからな」
「最初から百万円は」
「払うことはな」
まさにと言うのだった。
「ないってわかっていたさ」
「思われていなかったんですね」
「わかっていたんだよ、じゃあな」
「それならですか」
「百万はなしな」
「来年日本一になりますから」
「ならねえよ、大体御前俺より階級上になっただろ」
ここで駒込は中西に自衛隊のことを話した。
「だったらな」
「階級が下の人からどういった理由でも」
「金貰ったらまずいだろ」
「そうですね」
こうしたことでも階級は生きる、上の者が下の者の面倒を見ることはあってもその逆はあってはならないのだ。
中西もそれがわかっているからだ、駒込に答えた。
「そうですね、じゃあ」
「ああ、悪いがな」
「それが自衛隊ですから」
「そういうことでな」
「このお話は終わりってことで」
中西からも言った。
「それで」
「また会おうな」
「その時には阪神日本一になってますよ」
「それは絶対にねえからな」
駒込はまだ言った、だが。
阪神はまだ日本一になっていない、中西はそれでも今年は日本一と言っているがずっとなっていない。駒込が言った通りに。
百万円やる 完
2018・11・27
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