第一章
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百万円やる
中西寛太は彼が実習を受けている艦艇の第四分隊の事務室で給養の三曹である駒込に対して笑顔で主張した。
「阪神今年優勝しますよね」
「馬鹿言ってんじゃねえ」
駒込は中西に即座に答えた。
「阪神が優勝する筈ないだろ」
「じゃあ優勝したらどうなります?」
「その時は百万円やるよ」
駒込は中西に笑って話した。
「その時はな」
「百万円ですか」
「ああ、やるよ」
それだけの金をというのだ。
「日本一になったらな」
「じゃあ今年の十月に」
「だから馬鹿言ってんじゃねえって言ってるだろ」
これが駒込の返事だった。
「阪神の優勝なんてな」
「ないですか」
「ある筈ねえだろ」
それこそというのだ。
「絶対にな」
「ううん、そう言われますが」
「あの戦力でかよ」
「ここから大逆転ですよ」
「そう言って毎年じゃねえか」
笑顔で力説する中西に対して駒込はあくまで余裕だった。
「そうだろ」
「いやいや、それがです」
「優勝かよ」
「はい」
現実にそうなるというのだ。
「阪神はここからが凄いですから」
「そうか、けれど本当に優勝したらな」
駒込はその可能性が百パーセントないと確信して中西に語った。
「御前に百万円やるな」
「日本一になったらですか」
「その時はな」
こう言うのだった、だが。
阪神は駒込というか中西以外の人間が予想している通り勝てなかった、それでまさに毎年通りであった。
最下位俗に言われる定位置にあった、それでも中西は言い続けていた。
「いいハンデですね」
「ハンデかよ」
「ここから破竹の快進撃で」
それを行ってというのだ。
「一気にトップですよ」
「そうか、それでな」
「それでっていいますと」
「御前に頼むがあるんだけれどな」
駒込が米を倉庫に運び終えて少し休んでいる中西に言った、勿論駒込も米を運んでいた。四分隊全体での仕事だった。
その時にだ、こう彼に言ったのだ。
「もうちょっと休んだら艦の銅のところ磨いてくれるか」
「ああ、そろそろ出港なんで」
「だからな」
それでというのだ。
「見栄えよくしないと駄目だからな」
「それで、ですね」
「ちょっと磨いてきてくれるか」
「わかりました」
中西は駒込の言葉に笑顔で応えた。
「そうしてきます」
「もうピカピカにしてくれよ」
そこまで奇麗にというだ、海上自衛隊の艦艇の銅の部分は錆びて青緑色になりやすいが磨けばすぐに奇麗な黄金色になるのだ。
「いいな」
「そうしてきます」
中西は実際に少し休むとすぐに磨きに出た、そうして実際に銅の部分をピカピカに磨いてみせた。そうした日常業務も忘れなかったが。
阪神について言うことも
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