1st season
10th night
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「おい見ろ!今の奴が乗った車……」
「あれは……」
駐車場を出ていった黄色のRX−8を見て、さらに呆気にとられた三人組であった。
その噂のドライバーであるグレーラビットは、NSX−Rを借りてから2週間、C2エリアを走りこんでいる。Z32にはなかった、アクセルを踏んだ途端に後輪に襲い掛かってくるビッグパワーを制御することは容易ではなかった。
「Damn it……冗談じゃねぇ……」
NSX−RはMRであるため、パワーが上がればFR以上にシビアなアクセルコントロールを要求される。マシンに振り回されている彼が、これまでよりも車格が上の相手とのバトルで勝利を重ねられたのは、今はマシンのおかげと言えるだろう。
「……どんなTuneをやりゃ、こんなオンボロがここまで化けやがるんだ?こんなんじゃ、どこ吹っ飛ぶかわかんねぇし本気で踏めやしねぇ……」
深夜に差し掛かろうとする23時頃。数回のバトルをこなし、芝浦PAにて缶コーヒー片手にベンチで休憩中の彼に、話しかける影が一つ。
「よう、久しぶりだな。噂は聞いてるぜ」
「……テメェか」
話しかけてきたのは、雷光の疾風。走り込みの後だろうか、疲れた表情のままに、自販機で買ったペットボトルの水をその場で飲み干した。
「負けなしが続いてるってぇのにシケたツラしてんなァ。御自慢のZはどうしたヨ?」
「今整備中さ……こいつは代車だ」
「どんな店持ち込んだらこんなバケモン貸してくれるのヨ」
疾風はそのままに、グレーラビットの近くに座る。意図せずして二人同時にタバコをくわえ、火をつけた。
「……顔が重いナ。悩んでんのか?」
「……お前に話すことじゃねぇ」
「それもそうか。ヤキが回ったナ、俺も」
そこからは夜の静寂が二人を包む。どちらも話し出すことはなく、二人のタバコが消えるまで、ただ時間だけが過ぎていく。
同時刻、都内某所の古びたコンビニ。高速出入口付近であるためか、駐車場も店舗も広く、イートインコーナーが深夜でも使用できる。そこには缶ビールやチューハイを飲み、つまみを散らかしながらゲラゲラと大きな声で笑う、いかにも金欠そうな地元住まいの場末の中年集団が常連として居座っている。
「あの黒いNSXが、C2エリアで動き出したらしい」
「あぁ。どうやら、俺らより先に向こうが人材を見つけたみたいだな」
その中で、隅の席に30代ほどと思われるラフな格好の男性二人組が座っていた。酒ではなく烏龍茶のペットボトルを傍らに丼をかきこむその姿は、スーツを着ていれば営業のサラリーマンに、ツナギを着ていれば現場作業員のようにも見えた。
「どんな奴がアレに乗るのかね。俺はもう二度と御免だ。色んな意味で怖いよ、本当に」
「俺も。
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