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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  〜無形物を統べるもの〜
一族の物語 ―交わした約束― 中断
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通り。まあ他にも細かい感情がそこそこ欠落しているわけなんですけど、その辺は模倣して作ったりしましたので誤魔化せている状態になります」

模倣して作った感情。しかし人間というのはそう言う存在ではないのか。育つ環境によって感情が育てられる、とはそういう意味ではないのか。
そんな疑問は、続く言葉でかき消される。

「で、まあ欠落してる感情の数や重要性が大きい感情が欠落しているとより強大な霊格を獲得する、という体質を初代のお嫁さんである魔王・ジャンヌダルクから継承しているわけなんですけど」
「オイちょっと待て」
「待ちません。で、歴代当主の中にはざっくりと『愛』という感情が欠落している人がいたんですよ」

衝撃的なカミングアウトに対する反応をしれっと流して、勝手に話を続ける。

「しかしその人は欠落していることを問題だと判断したみたいでして。神社の人間にも関わらず教会へ聞きに行ったんですよ」
「……まぁ、『愛』ってものを聞く相手としちゃ間違ってなさそうだけどな」

時代によっては問題になってしまいそうな行動である。

「さて、そこで優しい神父さんは明確に『愛』というモノを教えることはありませんでしたが、いずれ誰かから与えられる日が来る。その時はそれを、他の人にも与えてあげなさい。なんて伝えたそうです」
「変に愛の定義を教わってそれを模倣するよりはいいんじゃねえか?」
「いやー、この場合は最悪の結果ですねー」

と、その後のどうなったのかを告げる。

「当時少年だったその人は、博愛主義を名乗る方から愛を学んでしまったのです。これはもう、最悪の一言ですね」

博愛主義者。人種・国家・階級・宗教と言った違いを超え、人類を平等に愛するという存在。なるほど、その考えは素晴らしいものだ。人間としての理性を正し曇った上でそれを唱えられるのであれば。そしてそれを心に抱ける人間が増えたのであれば。そこから争いがなくなるのかもしれない。

「結果少年は、博愛主義の愛を自分なりに解釈して、咀嚼して、模倣して、自らの中に作り出しました。周りはそれを始めの内は歓迎しましたね。人格者として、鬼道の印象をいい方向に持っていけるのではないか、と」

いけるのではないか、という言い方。それが示すところとは、つまり。

「さて、彼はその感情の異常性を表に出さないまま当主を継承し、誰にでも優しい素晴らしい人としてちょっとした有名人になりました。お嫁さんをもらって、子供もできて。まあその辺りのどーでもいい人生は割愛します」

カットです、と両手の指をハサミの形にして、物を切る仕草をする。その姿だけを見れば、可愛らしいものだ。

「そうして過ごしていたある日、鬼道の家に暗殺者が侵入します。暗殺者はまず子供を殺し、偶然遭遇したお嫁さんを殺し、
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