第一章
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猛虎の疫病神
中西寛太にはあるジンクスがあった、それは彼にとってはいいジンクスではなかった。
阪神の試合を観ると七割負ける、負けずとも相手チームからホームランが出るという碌なものではなかった。
それは彼が小学生の時からだった。
阪神は神宮球場で負けていた、すると中継のアナウンサーが言った。
「阪神これで全カード負け越し決定です!」
「これは最下位だな」
中継を観ている父の言葉だ。
「今年は」
「嫌だな」
「今年の阪神はな」
父は苦い顔で息子に話した。
「最下位だな」
「最下位かな」
「これだとどうしようもないだろ」
セリーグの全チームに負け越してはというのだ。
「それだと」
「何か嫌になるね」
「それはお父さんもだよ」
それはというのだ。
「けれどな」
「全カード負け越しだと」
「仕方ないだろ」
「そうなるかな」
「阪神は今年は駄目だ」
「そういえば」
ここで中西はこのシーズン彼がテレビで観た阪神の試合で印象に残った試合を思い出した、その試合はというと。
甲子園で桑田に負けた、バースが九回にホームランを打ってかろうじて完封は逃れたがそれでもだった。
このシーズン不調だった掛布と岡田がダブルプレーをやってしまいそれで試合終了となった、そうした試合だった。
その試合を思い出してだ、彼は父に言った。
「本当にね」
「駄目だと思うな」
「うん」
その通りと父に答えるしかなかった。
「もうここまできたら」
「最下位しかないだろ」
「吉田さんも辞めるんだ」
「それしかないだろ」
最下位になってしまえばだ。
「だからな」
「それじゃあ」
「ああ、もうな」
それこそと言うのだった。
「阪神は来年だよ」
「来年どうかだね」
「これはな」
こう言うしかなかった、この試合がはじめてではなかったが印象に残っている試合はこれが最初だった。
中西が観る阪神の試合はどれもだった。
負けた、大野の完封に落合の適時打にパチョレックのホームランにだった。何よりもヤクルト相手にだった。
彼が観る阪神とヤクルトの試合は大抵ヤクルトが勝っていた、それで彼は学校で友人達にぼやくのだった。
「僕が観る阪神とヤクルトの試合って」
「ヤクルト勝ってるか?」
「そうなんだな」
「気のせいかな」
こう思うのだった。
「野村さんがあっちの監督になってから時に」
「関根さんの時もだろ?」
「ヤクルト強くなったよな」
「昔は弱かったのにな」
「今はそこそこ強いな」
「そのせいか」
それでと言うのだった。
「ヤクルトには滅茶苦茶負けて」
「御前がいつも観てる試合はか」
「いつも阪神負けてるか」
「そんな気がするんだな
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