はじめまして、口入れ屋です。
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土壁のような物で塗り固められていた。しかも驚く程真っ直ぐで滑らかな壁面は、まるで最初からそのような形の岩をくり貫いて作られたかのようだった。窓には貴重で高価なガラスが嵌め込まれており、この建物の主は実は王公貴族の中に名を連ねている人間なのでは?と疑わせた。
「えぇと、どうしたらいいのかしら……」
予想に反してあまりにも立派な建物の前で、狼狽える娘。
「おねーさん、どうしたの?」
不意に背後から声をかけられた。後ろを向くと、帽子を被った少年がこちらをジッと眺めていた。鼻の頭に煤が付いていて、真っ黒だ。
「え?えぇと、私の事かしら」
「そうだよ、美人のおねーさん。オイラここの宿屋のヤックってんだ!」
そう言って少年ーーヤックは、『赤い煉瓦亭』を指差した。どうやら、この宿屋の主人の息子らしい。
「あ!もしかして口入れ屋のオッチャンに用事があんのか?」
手をポン、と打ち合わせてヤックが話す。
「えぇ、そうなの。でも、あんまり建物が立派だからどうしたらいいのか……」
「オイラに任せといて!時々そういうお客がいるから、オイラ案内してオッチャンにお駄賃貰ってんだ!」
へへへっ、と自慢気にヤックが鼻を擦る。しかしそのせいで、鼻の頭に付いていた煤が鼻の下一面に延びてしまい、まるで髭のようになってしまった。それを言うべきか言わぬべきか女が迷っている間に、ヤックはドアの横に付いていた妙な物を弄った。するとどこからともなくブーッと音が鳴り響く。
「な、何!?」
「ビックリしなくてもいいよ。これオッチャンにお客が来たのを知らせる魔道具なんだ。ほら、ここを押すと音が鳴るの」
魔道具、と聞いて女は内心腰を抜かしそうになった。魔道具とはその名の通り、魔法の込められた道具の事だ。しかしそれを作るのは並大抵の技術ではなく、ほとんどはダンジョンと化した古代の遺跡などから発掘するか高名な魔道具師に特注するかだ。そのどちらも目玉が飛び出る程の高価な代物だと聞いた事があった。それをたかが人を呼び出す為に使うとは。呼び出し用のベルか何かを設置すればいいだけなのに。女は頭がおかしくなりそうだった。しかし、更なる驚きはそのすぐ後に待っていたのだった。
『へ〜い、どちらさん?』
なんと、どこからともなく男の声がきこえてきたのだ。
「へへへ、ビックリした?これ部屋の中にいるオッチャンとも話が出来るんだぜ?『いんたーほん』っていうんだってさ!」
またも自慢気に語るヤック。女は本当に頭が痛くなってきた。
「オッチャン、オイラだよ!」
『生憎だが、俺にオイラって名前の知り合いは居ないねぇ』
「からかうなよ、もう!隣のヤックだよ。オッチャンにお客さんだぜ?」
『あいよ
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