第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十八 〜波乱の始まり〜
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耳を聾する叫び声が上がる。
だが、私は手を止めるつもりなどない。
……兵の中には目を逸らす者もいるが、四人はジッと私の一挙一動を見ているようだ。
無理はするな、と声をかけるつもりもない。
当人達が望んだ事、好きにさせるよりあるまい。
……と。
不意に漂い始めた異臭で、私の思考は遮られた。
女が、失禁してしまったようだな。
そして、最初の男も、
それを確かめ、残る二人の男を振り返った。
「次はお前達の番だが。望みがあれば申せ」
だが、答えはなかった。
既に、気を失っていたようだ。
「蔡瑁の手先でしたか」
苦虫を噛み潰したような顔で、疾風が呻く。
「庶人に紛れ込んで、我が軍の兵士が狼藉を働いたと触れ回る……。悪辣な策を考えたものです」
「馬鹿な事を。主の兵が如何に厳しい規律で従っているか、知らぬ訳でもあるまい」
「でも、これが的中していたら、お兄さんを弾劾する口実にはなったでしょうねー」
蔡瑁か……やはり、この世界でもそのような存在という事なのであろう。
「星、皆を集めてくれぬか」
「はっ!」
「疾風、襄陽に探りを入れよ」
「わかりました」
「稟、風。お前達は……」
と、その時。
「申し上げます!」
急を知らせる兵が、駆け込んできた。
「何事か!」
「はっ! 孫堅様が、戦死されたとの知らせが!」
……予感が、的中してしまうとは。
睡蓮とは、今生の別れになってしまうとは……やはり、無理にでも引き留めるべきであったか。
思わず、卓に拳を打ち付けてしまう。
「すぐに情報収集にかかりますねー。稟ちゃんも手伝って下さい」
「わかりました」
部屋を飛び出して行く皆の背を見送りながら、私は悔恨の念に苛まれていた。
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