第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十八 〜波乱の始まり〜
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うとするのかを」
口を割らぬ者に、容赦するつもりは毛頭ない。
間違いなく、私の尋問はこの国で尤も苛烈なものであろう。
少なくとも、疾風はその事を承知の筈だが。
「歳三殿。我々の事をご案じいただく気持ちは嬉しく思います」
「でも、風はお兄さんの全てを受け入れると決めているのです」
「それに、手段を選ばずに事を運ぶしかない場は当然あります。その判断が出来るからこそ、歳三様はお強いのですよ」
「生死と共にすると誓った仲ではありませぬか」
……全員、覚悟の上か。
「一切泣き言も恨み言も聞かぬぞ。良いのだな?」
皆、黙って頷いた。
「……良かろう」
一味は、男が三人に女が一人。
無論、全員が縛り上げられている。
入ってきた私を見ても、微動だにせぬ。
だが、服のあちこちが破けていたり、肌が赤くなっていた。
「疾風。少し、打ち据えたか?」
「はい。頑として口を割ろうとしませんので……些か」
「そうか」
男の一人を立たせ、柱に縛り付けるよう命じた。
そして、兼定を抜き、構えた。
男の顔に恐怖が浮かぶが、それでも懸命に歯を食いしばっている。
根性は見上げたものだが、いつまで耐えられるものか。
「ふんっ!」
兼定を一閃し、男の肌を浅く斬った。
「……くっ」
そのまま、何度か斬りつける。
浅傷故、痛みも然程ではない。
だが、当然男は血まみれと化していた。
「どうだ。話す気になったか?」
「…………」
「そうか。あれを持て」
「はっ!」
私の合図で、兵らが樽を運んできた。
「やれ」
「応っ!」
口を開けた樽の中身を、二人がかりで男に浴びせる。
「う、うぎゃーっ!」
忽ち、男が凄まじい悲鳴を上げる。
「主。これは、まさか……」
「そうだ、星。これは酒だ、無論一切加水しておらぬ」
消毒薬を一度に塗布したようなものだ、痛みも尋常ではなかろう。
「うぐぐぐ……」
「どうだ、まだ言わぬか?」
嫌々をするかの如く、男は頭を振る。
「では仕方あるまい。今度は、その女をそちらへ」
「は、はっ!」
暴れる女を押さえつけ、兵らが別の柱へと縛り付けた。
「さて、お前はどうするつもりか?」
「ぺっ!」
女は、強気にも唾をを飛ばしてきた。
それは私の顔には届かず、襟元を汚したに過ぎぬが。
「それが答えだな。では、望み通りにしてやろう」
私は小柄を取り出すと、女の足に突き立てた。
「ひぎっ!」
悲鳴は上げるものの、その眼は私を睨み付けている。
「疾風。その燭台を持って参れ」
「はい」
燭台を受け取ると、それを女の足の上で傾けた。
溶けた蝋が、滴り落ちる。
そのまま、小柄を伝い……傷口へと至る。
「ぎぇっ! あ、ああっ!」
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