第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十八 〜波乱の始まり〜
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慌てて礼を取る兵。
「そこの者、貴様の知り合いか?」
「いえ。この城下の者らです。賊に襲われたとの事で、保護したところです」
「そうか。ところで貴様、誰の麾下か?」
「はっ。趙雲様の麾下です」
淀みなく答える兵。
「ふふふ。それで言い逃れたつもりか?」
「は?」
「貴様の纏っている鎧、確かに星麾下のものだ。だが、何故そのように傷一つついておらぬのだ?」
「……そ、それは……。私は運良く、剣を交える事がなかったのです」
「ほう。だが昨夜は星も、先陣を切ってこの城に突入した筈だ。その麾下で戦闘の機会がない申すか?」
「う……」
言葉に詰まる兵。
「く、クソッ!」
そして、剣に手をかけた。
「覚悟あっての事であろうな?」
「おい! 此所は俺が防ぐ、お前らは逃げろ!」
後ろにいた三人は、慌てて反対側へと駆け出す。
が、数歩進んだところで、先頭の一人が盛大に転んだ。
「うわっ!」
「キャッ!」
無論、他の二人も。
「な、何だこれは!」
立ち上がろうとして、再び転んだ。
呆然とする兵は、隙だらけだ。
「む!」
「ぐは!」
抜きざまに峰打ちを浴びせる。
兵は堪らず、その場に倒れた。
「さて、貴様らも大人しくして貰おうか」
風が撒いた油まみれの一味は、それでももがこうとする。
「その水は、火を付けるよ勢い良く燃える。試してみるか?」
「…………」
「風」
「御意ー」
建物の影から、松明を手にした風が姿を見せた。
一味の顔に、恐怖が浮かぶ。
「さて、返答は如何に?」
その時、不意に殺気を感じた。
兼定を振るうと、一条の矢が足下に落ちた。
「何奴だ!」
「チッ!」
舌打ちと共に、繁みが動いた。
「がっ!」
そして、短い悲鳴が上がる。
「主! 曲者は捕らえましたぞ!」
そして、一足遅れて兵らの靴音が近づいてきた。
半刻後。
頭を振りながら、疾風がやって来た。
急を知り、駆けつけて連中の尋問に当たっていたところだ。
「どうだ?」
「はい。殊の外しぶとい奴らで」
「そうか。ならば私が代わろう」
「ならば、私も参りますぞ」
すかさず、星が言う。
「捕虜の尋問だ。警護は要らぬぞ?」
「は。しかし万が一、という事もござりますからな」
「ではでは、風もお供しますねー」
皆が同行を願い出た。
「皆、それぞれに役割があろう。それを果たすが良い」
「それでしたら、私は歳三殿と共に当たらなければいけませんね」
「疾風ちゃんだけじゃないのですよ。風もですからねー」
「では、私も筆頭軍師として、事態を把握する必要があります」
「私は主をお守りする。これに勝る役目はござらぬよ」
「……わかっているのだろうな。私が何をしよ
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