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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
93話:婚約
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れば、20歳を前に将官になる事も周囲が受け入れやすくなるだろうともお考えのようね」

「ディートリンデ皇女殿下ですか......。知らない仲ではありませんが、何と言うか。自分が誰かと結婚するという事に実感をもって考えられない所があります。光栄なお話ですし、お断りできる話ではない事も理解しているのですが......」

「その辺りは急ぐ必要はないわ。伯を始め、夫になる心構えについては色々と教えて頂けるはずよ?まずは貴方の帰りを待つ人が一人増える事をきちんと考えれば大丈夫よ。そして、そういう方々が上司の方にも、部下の方々にもおられる事を忘れないでほしいの」

弟は幼少の頃から『あの方』の下で励んできたし、駆け上がる様に昇進してきた。その分、世間一般の事に疎い所がある。私からは聞きにくい事だが、恋愛をしたことはあるのだろうか?ディートリンデ皇女殿下は、大人しい方だが感性は豊かだし、お優しい方だ。頑固で決めたら突き進んでしまう様な所がある弟と合うのだろうか?心配になっていた。

「承知しました。私もまだまだ至らぬ点はあるでしょうし、特に男女の機微については疎い所があるので、シェーンコップ男爵やロイエンタール卿にも話を聞いてみようと思います」

「そうね。まずは家庭をお持ちの方が良いと思うわ。私からも伯にお願いしておきましょう」

さすがに婚約者ができるのに、その御二人では問題があるのは私でもなんとなくわかる。ジークにも頼みにくい話だけど、頼んだ方が良いのかしら......。それも含めて伯にご相談したほうが良いだろう。私も同年代の男性との接点がほぼない。男女の機微に疎いのは弟に限った話ではないのだから。

「お待たせしました。すぐにお茶を用意をいたします」

微妙な空気になりそうなところにジークが戻ってきてくれた。少なくとも婚約することは承諾してくれたし、あとはご指導をお願いするしかないように思う。

「ジーク。貴方のお茶をいつも楽しみにしているの。今日もよろしくお願いしますね」

「はい。アンネローゼ様、今少しお待ちください」

ジークがいつもの手さばきでお茶の準備を進め、サロンには紅茶の香りが広がった。いつまでも嬉し気にケーキを食べてくれていたら。私はそれだけで十分満足だったのだけど、大人になるというのはこう言う事なのかしら。ため息が出そうになって、思わずそれを飲み込んだ。
陛下にご相談したら話が大きくなるだろうし、『あの方』と内密に会う訳にはいかない。バラ園でのお茶会をお願いしようかしら。いつも通り、大き目に切ったケーキを二人の手元に置き、それを嬉し気に食べるのを見ながら温かい時間を過ごすことが出来た。励んでいるのだから水を差す訳には行かないが、二人が前線に赴けば、またこういう時間が減ってしまうだろう。それを残念に思
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