暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 11
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していた者達には厳罰を下し、コルダ現大司教が中央区司教の役目を引き継いでからは、更に環境が改善され……
 と、ここで話を留めれば美談のようにも思えるが、この先にはちゃっかり女悪魔が待ち構えている。

 他者の善意を集めた無力な集団は、嫉妬や欲望を抱いた浅ましいその他の集団から集中攻撃されてしまう。
 さしものプリシラも、大衆心理を敵に回すのは子供達にとって良くないと判断したのか、表立った孤児院の擁護はしていない。

 しかしミートリッテさんの証言によれば、プリシラが中央区司教の権限を持っている現在、王都の孤児院に勤める担当神父達と彼らとの定期連絡係は全員、プリシラの忠実なる下僕だ。
 なんなら王都以外の孤児院にもこっそり混じっているという、プリシラの言葉に従い、プリシラの意を汲み、プリシラの為だけに奔走する、プリシラ至上主義のプリシラ応援団(外国の言葉ではファンクラブと呼ぶらしい)。
 なんかもうアリア信徒とは別モノな気がするのだが、やってること自体はアリア信仰の善意そのものなので、コルダ大司教も黙認しているらしい。

 そんなプリシラ大好きっ神父()達と、四六時中同じ敷地内に居る子供達が、時折こそっと遊びに行っているプリシラに対してどんな感情を抱くかなど、考えるまでもないわけで。

 つまり

 王都の孤児院は今や、プリシラの箱庭なのである。

 プリシラは差し入れを持って視察(あそび)に行く。
 それを口実にして、買い物の許可を貰った。

 孤児院へ持っていく為だからと多めに入手した食材から私達の分を引き。
 幼児化したレゾネクトに着想を得て集めた、子供達への手土産()も十二分に活用して、ロザリアの憂いを無事に解決(?)。

 責任者不在の穴埋めと荷物運びは、助っ人の『彼ら』に任せて。
 担当神父達への根回しは、鳥の報せ一つで完了。

 中央教会の役持ち達は、祭日の準備で忙しいし。
 なにより、狂犬(プリシラ)の領域に迂闊な手出しはできない。
 どこの誰だって、斜め上下から突然降ったり湧いたりする、突拍子もなく奇天烈で回避不可能な仕返しは恐いものだ。
 わざわざ平穏に見える(やぶ)を突いて暴竜を出す愚行は冒さないだろう。

 こうして、隠蔽工作の証拠隠滅は達成された。



 ミートリッテさんの職場に運び込まれた大量の百合根の下拵えは、人手がまったく足りていないからと、プリシラが善意と引き換えで私達にこっそり請け負わせた仕事だ。
 私達としても、ただお世話になるよりは(後が怖くないから)と、快く(?)作業に取り掛かったのだが……。

「そういえば、プリシラ」
「なぁに? クロちゃん」
「教会には居ない筈の私達が、教会で使われる百合根の下拵えなどしていて大丈夫なの
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