84話:派閥
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事も意識しなければ他部署から白い目で見られる。そういう物をなんとなく肌で感じたから国防委員会に近づいたのだろうか?そのせいで、取り巻きに強く出れないとしたら、悪い循環に入っているようにも思うが、今更、私から忠告をしても修正するのは困難だろう。
「儂らが正規艦隊司令になれたのも朗報じゃが、いよいよお主が宇宙艦隊司令長官じゃ。この戦局では明るい材料が多いとは言えぬが、儂らも支えるつもりでおる。なんとか励んでもらいたいところじゃ」
「教官たちに支えて頂けるなら、心強い限りです。ただ、この立場になった以上、全ての正規艦隊に一定の配慮をせざるを得ないでしょう。どこまでお返しできるか分からない所が申し訳ないくらいです」
宇宙艦隊司令長官は、実戦部隊のトップだ。その立場にある人間が贔屓を始めたら、それこそ軍全体がおかしなことになりかねない。国防委員会の横槍をはねのける意味でも、誰から見てもそれなりに筋の通った形にする事を強く意識しなければならないだろう。
「その件なら、気にする必要はない。儂らは信賞必罰がちゃんと機能してくれればそれで満足じゃ。それと期待したい配慮としては、数個艦隊を派兵する際は、我らで組ませてほしいという所じゃろうな。今回の会戦で、確かに戦術面で光明が見えたが、『功に焦る者』や『自分の功績の為ならリスクを押し付ける輩』と一緒では、帝国の補給のタイミングまでは守勢を取り、一時的に戦線の戦力が減るタイミングで痛撃を与える戦術は実行出来んからな。
10個艦隊と言っても、帝国がフェザーンに進駐した事を思えば、3個艦隊は手元に置かねばならんだろうし、ハイネセンを空にするのは国防委員会が許さんじゃろう?となれば、儂らの3個艦隊とロボス、パエッタと誰かを組ませて交代で哨戒するような形にして欲しいとは思っておる」
「そう言う話なら何とかできるでしょう。宇宙艦隊司令部の中に派閥があることは本来好ましくはありませんが、派閥争いを前線に持ち込まれれば、その負荷は最終的に兵士たちが負うことになります。今の同盟軍にそんな事を許容する余裕はありませんからな」
任官した時から、責任ある立場になりこの戦争をなんとか優勢に出来ればとは思っていたが、昇進するほど、部下や他部署、それに国防委員会への配慮を考えなければならなくなった。宇宙艦隊司令長官という役職に任じられたことを嬉しくは思うが、憂鬱な事が無いわけではない。
『貴殿らの練達した艦隊運用に敬意を表す』か。会敵したシュタイエルマルク艦隊からの電報だが、少なくとも帝国には敵の勇戦を称える余裕がある。帝国軍人には、こんな悩みは無いのだろうか?宇宙の向こう側のもう一人の宇宙艦隊司令長官の心境に、私は思考を向けていた。どうせなら同じような気苦労があってほしいものだが......。
宇宙歴792
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