不安
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ては軍属の少年たちだ。
だが、親が軍であるからと言って彼らに違いがあるわけではない。
彼らは育ち――やがては。
そこでカイザーリンクの顔が歪んだ。
泣きそうな――ともすれば、馬鹿のような表情だ。
強い自己嫌悪が、彼の心を蝕む。
胸を押さえ、力を込めた。
「すげー」
そんなカイザーリンクの耳に入ったのは、子供の純粋な尊敬の言葉だ。
何か。
疑問を感じて、近づけば木々の隙間。
広場に、赤毛の青年がボールを蹴っていた。
それはともすれば、プロの様に自由にボールを操っている。
少年たちが幾人も集まって、そのボールを取ろうと試みるが――誰一人としてボールにたどり着くことはできない。足を手のように操りながら、笑みを見せる青年は――まるで子供のようだ。
そこまで来て、カイザーリンクは青年の名前を思い出した。
ジークフリード・キルヒアイス。
イゼルローン要塞での有名人だった。
しばらくの間――それを見ていれば、やがてキルヒアイスは視線に気づいたようだった。
一瞬だけ怪訝に、しかし、すぐに敬礼を返せば――ボールはあっさりと奪われた。
喜ぶ少年たちに、小さく苦笑を浮かべれば、すぐに取り返し、ボールを蹴った。
我先に少年たちがボールへと集中する。
それを嬉しそうに見送れば、再びキルヒアイスが振り返った。
「失礼いたしました」
「いや。子供たちが楽しそうで何よりだ。謝ることはない」
謝罪をするキルヒアイスを止めて、カイザーリンクはボールの行方を追った。
既にボールを手にした子供たちへ、少年たちが殺到している。
楽し気な声を前にして、カイザーリンクの頬も緩んだ。
「見事なものだね」
「お恥ずかしいものです」
「謙遜することはない。君ならばプロにも慣れたのではないかな」
「どうでしょうか。考えたこともなかったです」
丁寧に、キルヒアイスは答えた。
童顔の赤毛の青年が、カイザーリンクを見ている。
そんな視線に、カイザーリンクは彼の噂を思い返した。
金髪の小僧――皇帝の寵姫の弟の腹心。
悪い噂の主役にすらならない。
そんな人物であったが、違うなとカイザーリンクはすぐに否定をした。
その身のこなしは常人を超え、そして見どころのある好青年。
金髪の小僧という人物に会ったことはないが、決して「おまけ」などで収まる人物ではない。
だが。
「ミューゼル殿は元気かな」
カイザーリンクが言葉にしたのは、彼の主人とされる人物のことだ。
言葉に、キルヒアイスは驚いたようだった。
しかし、わずかに微笑。
「ええ。今も任務を待ち望んでおります」
「まるでマグロのような男だな」
泳がなければ死ぬ魚を思い浮かべ、カ
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