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ツインズシーエム/Twins:CM 〜双子の物語〜
ツインレゾナンス
第19話 秘密と決意と悪意と
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 数秒間だけ、世界の時間が止まったように思えた。

 その後で、暑い夜には心地よく感じる夜風が、部屋の中へと入ってきてカーテンを揺らす。

 月明かりに照らされた部屋の中、外からの静寂までもが侵入し、その場に停滞をもたらす。

 エースは、一瞬何を言っているのか分からなかった。理解した後も、その言葉を飲み込めなかった。

 それはまるでよく晴れた日に到来するスコールのように、唐突に訪れたからだ。

「あなたのことが大好きです。友達じゃなくて、一人の男性として」

 開いた口が塞がらないとは、まさに今のエースを表すのに相応しい言葉ではないだろうか。何かを言おうとしても、喉元でつっかえて何も出てこない。たった一言に込められた想いの重さがエースの思考回路をショートさせ、頭を真っ白にする。

「3年前、道に迷った私を助けてくれたあの時から、ずっと、ずっとです」

 紡がれる想いは、音となって宙に溶けていく。拾い集めるのがやっとで、理解するのに時間がかかる。

「ご、ごめん。ちょっと待って。頭パンクしそう」

 エースがどうにか出せた言葉は、それだけだった。この場にはあまりふさわしくはないかもしれなくとも、今のエースには相応不相応をきちんと考えられる思考能力など、残っていない。

「突然言われたら、やっぱりパニックになるよね」

 確かに、突然の告白で頭の中が整理できていない自分がここにいる。

 何せ食卓にて大切な人に関して述べてから、まだ2時間しか経っていない。それなのにも関わらず、こうして明かされた想いに、エースは何かを言うことが出来なかった。

「答えは言わなくていいよ。分かってるから。これは私が思いを伝えたかっただけの、ただの自己満足でしかないから……」

 フローラの言葉に隠れた悲哀に対して、エースは何か少しでも否定の言葉を言いたかった。

 そうではない。そうではないのだ。自分だって本当は――

 そんなことを言おうとしても、口から上手く出せずにつっかえる。それを繰り返す間、エースは世界を動かす時間から取り残されていた。







 取り残されたからこそ、その反応が遅くなった。

「ほう……そうですか」

 エースのように程よく低くもなく、フローラのように高く澄んでもいない声が、暑さを和らげるために開け放ってある窓の方から響いた。

 第三者の来訪を告げるその声の方向をエースが向こうとした次の瞬間、その視界はぐるりと回った後に床の色で埋め尽くされた。地面に伏せた形となっているその体からは、力がどんどんと抜けていくような感覚がある。

 それでもベッドの端を支えにして、エースはその場でフラフラと立ち上がる。

「なんだ、お前……」

「ほう
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