暁 〜小説投稿サイト〜
ツインズシーエム/Twins:CM 〜双子の物語〜
ツインレゾナンス
第19話 秘密と決意と悪意と
[4/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
なった。

 だが1つだけ、まだ理解するに至っていないことがあった。

「でも、なんでこれを俺だけに?」

「えーとね、後でスプラヴィーンくんにも話すのは話すけど……」

 その不可解なことを聞いた途端、フローラは急に奥歯に物が挟まったような言い方になった。不自然すぎる変わり方をエースは少し訝しんだが、すぐに表情を戻して会話を続けた。

「まぁいいや。後で話すんなら話してくれればいいと思う。とはいえ向かいの部屋だから、少しは聞こえてると思うけどね」

「うん。そう、させてもらうね」

 そういうフローラの表情は、何故か逆に曇っていくように見えた。まるでこれから話すことの方がもっと大事であり、それを話すための決意がまだ出来てない、というような感じだった。

「まだ、なんかあったりする?」

「え?」

 エースのその言葉で、フローラの表情は沈み込み気味な暗いものから、純粋な驚きへと変わった。その変化で予想が確信へと変わったエースは、さらに言葉を続けた。

「これを今言うとさっきの俺の言葉と矛盾するんだけどさ……もし双子だって伝えるだけなら、4人揃ってからリビングで話した方が手間が省けていいだろ? なのにそうしないってことは、もっと別のことがある、ってことなのかなー、と。これはあくまでも俺の勘だし、気に障ったなら謝るんだけどさ」

 長々と自分の考えをエースが口にすると、その目の前でフローラが大きなため息をついた。その姿は、落胆ではなく諦めという風にとった方が正しい気がしていた。

「やっぱり、隠し事しててもすぐに見抜かれちゃうなぁ……。鋭いね、フォンバレンくん」

「スプリンコートさんが嘘や隠し事が苦手なだけだと思うけどね」

 笑いながらそういうエース。

 長い付き合いの中で、フローラが嘘をつくことが苦手なことは知っている。仮についていたとしても顔に出てしまってすぐにバレるのだ。それは隠し事の類いをしない分、信頼も容易に出来る人物である、という風に言い換えることも出来る。

「それで、本当に俺にしか言えないことって、なに?」

 エースの聞き返し方は、とても軽かった。言葉の重みは、次をどうぞという程度でしかない。それは、次に何が来るか全く知らない、無知であるが故の軽さであった。

「あのね。こんなこといきなり言われても面食らっちゃうかもしれない。けど、少しだけでいいから、ちゃんと聞いてくれると嬉しいです」

 フローラがそう言いきったあと、少しだけ間が置かれた。それはこの後に告げる言葉の重さを知っているが故の、重さを感じるための一時。これまで現実を見て揺らいでいたものは、現実を見てなおそこにしっかりとある。







「私は……あなたのことが好きです」


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ