英雄伝説 閃の軌跡 王者の風
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の焔は今にも消えそうな程に弱り、全身が酷く重い。それでもあの男を止めなくてはならないという思いで傍に落ちている太刀を支えに立ち上がろうとして、血を吐いて倒れそうになる体をあの男が支えた。手に持つ戦術オーブメントは今にも発動するのか青く光り輝いている。
「もう目を覚ましおったか。随分と頑丈じゃな。そろそろ発動するぞ」
その言葉と共に戦術オーブメントが一際大きな光を放ち、体に活力が戻る。すぐに拳を握り、殴りかかるがその腕も捕られて組み伏せられる。
「元気になったようじゃな。悪いようにはせん、もう少し眠っておれ」
そのまま首を絞められて意識が落ちる。
絞め落としたリィンを風雲再起に乗せ、ユミルの郷にまで降りる。風雲再起に乗せられたリィンを見て村人が領主の館へ走って知らせ、別の村人に案内されて領主の館へ向かう。リィンを自室のベッドまで運び、シュヴァルツァー夫人に看病を任せる。ワシは執務室へと通され、領主であるテオ・シュヴァルツァーと対面する。
「ワシは旅の武闘家でシュウジ・クロスと申します。まずは謝罪させていただきたい。リィンを痛めつけたのはワシなのです」
ワシの告白にテオ・シュヴァルツァー殿が困惑の表情を浮かべる。
「それは、どういったことでしょう?」
「そもそもワシがユミルを訪れたのは剣仙に会うためだったのですが、偶然リィンに出会ったのです。少し話してみれば何やら悩みがあると感じ、相談に乗りました。初伝を授かったが見放された、妹御に避けられるようになった、それ以上にすべての元凶である自分の中に眠る異能に関して何も解決が出来ていないことに」
「そんな、もう乗り切れたのだとばかり」
ふむ、周りに気が付かせないようにしておったか。それが悪い方向に動いておるのぅ。
「話すに話せなんだようだのう。ユン・カーフェイもいずれは乗り切れると思って、獅子が自分の子を谷底に落とすように、あえて突き放したようじゃが、今のリィンには無理だろう。体と技が育とうと、肝心の心が育っておらぬ。4年前に魔獣に襲われた時から、あやつは一歩も前に踏み出せておらぬ」
「心を育てる」
「さよう、心に巣食う鬼を抑えるためには心を鍛えるしかない。肉体を鍛えたところでどうにかなることではないわ」
「ですが、心を育てるとは?」
「ワシが旅してきたとある国にこんな言葉がある。鉄は鉄によって鍛えられ、人は友によって磨かれる。あやつに、友と言える者はおるかのう?」
「……いえ、ユミルは小さな郷です。数少ない同世代も4年前のことで距離をとってしまいました」
「仕方のないことではある。異常を恐れて離れるのは生物として普通のこと。そこでだ、1年ほど、ワシにリィンを預けてみぬか?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ