第16話
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に来たな。本当に軍隊なのか?
呆れと共に視線を走らせると、指揮官を名乗る青年と目が合った。途端にレンチェフの全身に汗が浮かぶ。
――ヤバい。こいつぁとんでもねぇ、完全にイっちまってやがる。
レンチェフの勘が全力で警報を鳴らす。何が『ヤバい』のかを言語化することはレンチェフにはできなかったが、強いて言うなら『格が違う』というところだろうか。不良には不良の流儀があり、不良にとっては腕っぷしよりも格付けの為の人物鑑定眼が大事、という時がある。喧嘩を売る相手は選べ、ということなのだが、レンチェフはストレイドという男の目を見たときに気付いたのだ。この男が誰かは知らないが、安心と信頼と実績の大量殺人者だということに。
レンチェフも相当のツワモノだが、目の前の青年は桁が違う。レンチェフは自分の流儀や感覚が真っ当なものだとも普遍的なものだとも考えていない。理解されない、されにくいことは残念に思うが、上下から疎まれて部隊から離される程度の軋轢で留めておくくらいには良識もある。少なくとも、レンチェフは軍規を逸脱したわけでも軍組織そのものを逸脱しようとしたわけでもない。法的にグレーの部分が真っ黒だったりはするが、軍の掲げる白と黒の基準に公然と逆らったりはしていない。部隊を取り上げられても大人しく従った。レンチェフは確信犯の過激派不良軍人だが、軍人を辞めてはいない。そのレンチェフの感覚から言えば、目の前の青年は明らかに一線を越えていた。超が3つも4つ付く危険人物。レンチェフを迎えに来た連中とは比較にもならない。青年の気配そのものは一般人なだけに、その瞳の奥に潜んでいるモノがなおさら恐ろしい。
萎縮したレンチェフの内心を知ってか知らずか、のほほんとしたストレイドは続ける。
「ま、とりあえず好きに座ってくれ。そうだな、マ・クベ司令官からどう聞いているかわからないが、私達は軍隊ではない。反地球連邦組織だ。リリアナ。聞いたことくらいはあると思うが」
「リリアナ! あんた達が!?」
リリアナ。その名前はレンチェフも基地にいた頃に耳にしたことがある。今次大戦に便乗して活動を激化させた反地球連邦組織のうち、破壊活動の過激さで群を抜くテロリスト集団。
――地球に暮らす皆さん、地球連邦を支持するとこうなります。死ねっ!
そう言ってウィーンの街を民間人ごと核爆弾で吹き飛ばしたのは彼らだという。
連邦軍のオデッサ奪還作戦が頓挫したのは、公式発表によると付近の廃坑から旧世紀の核廃棄物が大量流出して奪還作戦どころではなくなっためであり、延期であって失敗ではないとされている。だが、嘘か真か、リリアナが連邦軍の先鋒を核兵器で皆殺しにしたからだという話もある。そもそも、オデッサ制圧が予定以上に上手く進んだのは、既に地元の反地球連邦組織によって基地
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