第一章
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騙される者
近頃ネット界隈が騒がしかった、日本の周りの国々に対して強硬な意見が注目を浴びていた。
「戦争だ!」
「追い出せ!」
「やっつけてしまえ!」
こうした好戦的な主張や論調だけでなくだ。
差別用語や罵倒語まで氾濫していた、その状況にサラリーマンである山村作之助は会社の外で昼食を摂っている時に共に食事を摂る同僚の門倉安吾に言った。
「最近ネット見てたら物騒だな」
「物騒ってどんなのだよ」
「ああ、もうあれだよ」
山村はその面長の顔で言うのだった、髪の毛は黒く細い質で真ん中で分けて前のところを膨らませる感じにしている。目は細く唇は小さく鼻は高めだ。地味な紺色のスーツは一七二程の痩せた身体によく似合っている。
「今にも戦争をしろっていうな」
「ああ、日本の周りの国とか」
「そんな感じだよ」
「あれだろ、そんなことを言う奴ってな」
坂口はやや肉付きのいい丸眼鏡の顔で言った、黒髪はやや無造作な感じで白いものが少しだけ見えている。山村と同じ位の背丈の身体は顔と同じくやや肉付きがよく濃い水色のスーツに覆われている。
「一部だろ」
「一部か」
「それか適当にな」
「ネットでか」
「言ってるだけだろ、そんな連中はな」
「気にすることはないか?」
「ネットとリアルは違うからな」
坂口はよく言われる言葉を出した、そうして自分が食べている牛丼特盛山村も食べているそれの上に紅生姜を大量にかけた。
「だからな」
「一々か」
「ああ、気にしていたらな」
それこそというのだ。
「きりがないだろ」
「それもそうか、しかしな」
「過激か」
「戦争だとかな、追い出せとかな」
「他の国の人達をか」
「そリャ日本は守らないと駄目だろ」
山村は難しい顔で述べた。
「自分の国はな、俺なんか応援してるチームなくなったしな」
「チーム?野球のか」
「そうだよ、球界再編の時にな」
以前あったこの騒動の時にだ、山村が応援していたチームは合併という形で消滅した。彼にとっては実に忌々しい記憶だ。
「ああした思いを国でするとかな」
「嫌だよな、やっぱり」
「だからいざって時はやる覚悟も必要だよ」
山村もこのことは否定しなかった、そのうえで牛丼を食う。
「けれどな」
「やたらと物騒で過激な主張はか」
「やっぱり駄目だろ、差別用語平気で書いたりとかな」
「人間としての品性疑うな」
門倉もそのことは言った。
「やっぱりな」
「ネットの上でもな」
「だからか」
「ああ、そうしたことを平気で書き殴る連中がいるのはな」
「嫌か」
「御前は一部だって言うけれど凄く書き込みが多いんだよ。6ちゃんとかでな」
「6ちゃんか」
このネットの代名詞とまでなっている巨大掲示板
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