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罠にかかった鹿
第三章
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「これからですね」
「罠をだな」
「観に行きましょう」
「そうするか、しかしな」
「しかし?」
「ふん、全く以て不愉快だ」
 こう言ってだ、ガムランは娘婿に応えた。
「今回のことはな、あまりにも不愉快でだ」
「だからですか」
「昨日こう思っていたのだ」
「何とでしょうか」
「わしが捕まえたものは絶対に御前に渡すものかとな」
 例え鳥を捕まえてもそうしようと考えていたというのだ。
「そう思っておったわ」
「そうでしたか、実は私もです」
「御前もか」
「そう思っていましたが考えを変えまして」
「それでか」
「まあ私のものは私のものですが」
 捕らえた得物、それはというのだ。
「ですが今はまあそれ程は」
「考えておらんか」
「そうなのです」
「言ってる意味がわからんがな」
「まあとりあえずはです」
「罠の場所にだな」
「行きましょう」
 カバヤンはこう言って義父と共に罠のかかっている場所に来た、するとそこにはだった。
 カバヤンの落とし穴の罠には何もかかっておらず義父の鳥の罠の方には鹿がかかっていた、それでカバヤンは笑って言った。
「私の負けですね」
「わかっていっておるな」
「あっ、わかりますか」
「わかるわ、わしも馬鹿なことをした」
 今になって後悔して言う義父だった。
「昨日から御前と言い合いをして夜明け前に罠を観に行ってむしゃくしゃしてだ」
「それで、ですか」
「全く、御前の勝ちだ」
「そう言われますか」
「何もかもな。これは御前の罠におった鹿でだ」
 ガムランはこのことを正直に話した。
「わしが無理にだ」
「鳥の罠に移したんですね」
「そうだ、御前は日課で罠を観に行ってたな」
「はい、朝早く」
「それでも何もせんかった、何もかもがわしの負けだ」
 それこそと言うガムランだった。
「やれやれだ、ではだ」
「それではですか」
「わしがしたことを全部女房と娘に話すぞ」
「二人に滅茶苦茶に怒られますよ」
「悪いこと、間違ったことをしたら怒られるのは当然だ」
 このことはガムランもわかっていた、それで言うのだった。
「だからこの鹿を家に持って帰ったらな」
「妻と義母さんに義父さんがお話をして」
「思いきり怒られるわ」
「そこまでされますか」
「悪いこと、間違ったことをしたのだ」
 だからこそというのだ。
「そうなる、ではな」
「これよりですか」
「鹿を持って帰るぞ、いいな」
「わかりました」
 カバヤンは義父の言葉に頷いた、そうしてだった。
 二人にありのままを話して思いきり怒られた、それからはもう家の長だからと変に強情になったりせずに人の話を素直に聞く様になった、それが出来たのもカバヤンの少し意地が悪いというか剽軽な気遣いのせいであろうか
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