十七 サソリVS三代目風影
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り回される中、サソリは(馬鹿な…!?)と目まぐるしく回転する視界に認めた存在に、愕然とする。
ワイヤーを引き寄せている相手は、いの。
毒で動けないはずの彼女が凄まじい力で自分を引き寄せている。歩くなどという簡単な動きならともかく、空を飛ぶ自分を引き摺り落とすなどという激しい動きなど出来るはずもない。
(毒で動けないはず…ッ)
困惑するサソリには、ふたつ、誤算があった。
ひとつは、毒に侵されたいのが自由に動ける事は出来ないだろう、と思い込んでいたこと。
もうひとつは、いのの力が相手の身体を乗っ取るだけしかないと考えていた事だ。
カンクロウの治療時に、ヒナタと協力して作った解毒剤。
それをいのは、サソリが三代目風影の傀儡を巻物に戻した際に煙を隠れ蓑として、注射器で己の身体に注入したのである。
また、いのは怪力を最後まで隠し通していた。
自分の能力が相手の身体を乗っ取る力のみとサソリに思い込ませるのが狙いだったのだ。
身体が痺れても最後までとっておいた解毒剤。そして怪力。これらがいのの奥の手だった。
つまり、いのの解毒剤を知らず、更に彼女の綱手譲りの怪力を知らずにいた事がサソリの敗因だったのだ。
(しま…ッ)
サソリの弱点。チヨが推測した左胸の『蠍』目掛けて、いのは拳を振るう。
手繰り寄せた長いワイヤーがいのの怪力でひしゃげているのが、サソリの視界の端に過ぎった。
凄まじい力を込めた拳が、正確に、サソリが唯一残していた生身のパーツへと繰り出される。
渾身の一撃。
「これで…終わりよ!!」
「それは困るな」
パンっと、軽い音が響き渡った。
いのの怪力をいとも簡単に手のひらで受け止めた彼は、引き摺り落とされたサソリの身体をも、平然と支えている。
もう後がない最後の攻撃を容易に受け止められて、いのは愕然とした。チヨもいきなりの第三者に、動揺する。
いのとチヨはもちろん、サソリでさえ驚く反面、割り込んできた彼は平然とその場に立っていた。
フードの陰に隠れて顔は全くわからない。隙も気配も窺えない。
サソリ以上の強者の風情を感じさせる彼の声は、しかしながらいのには何処か懐かしいものに思えた。
だがその裏地に映える赤い雲が、サソリと同じ『暁』だということを露わにしていた。
「彼にはまだ、やってもらわないといけないことがあるんでね」
サソリといのの間に割って入った
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