第六十二話 前進
[8]前話 前書き [1]後書き [2]次話
航海は概ね順調だった。
魔物自体は昔よりも凶暴化していたし、数も多かったけれどそれ以上にレックスとタバサがどんどん実力を発揮し始めて船に被害が出る前に敵を倒せるようになったからだ。
幸いにも天候などに恵まれ特に大きなトラブルもなく進路を進める事ができ、無事に最果ての祠に着いた。
最果ての祠はぱっと見ただの小さな洞窟だったが中に入ると石造りの神殿のような構造で清浄な空気が満ちている。
入り口を見渡すと、奥に地下への階段があった。ストロスの杖は最深部にあるという事か。
「魔物の気配はなさそうです、先生」
「そうなのね、ありがとうタバサ」
タバサは父でアベルの血を色濃く受け継いでいるのか、魔物や動物と心を通わす事ができた。それだけじゃなく些細な魔物の気配も敏感に感じ取れるため彼女の直感にはよく助けられた。
「魔物と戦う必要がないならとりあえず安心だね!」
レックスは満面の笑みを浮かべた。航海は順調だったけれど魔物と日々戦い続ける事に辟易しつつあった彼にとっては魔物と戦わずに済むことは嬉しいのだろう。
階段を降りると下は一本道で奥に先端に青く輝く宝珠がつけられた黄色い杖が台座に飾られているのが見えた。あれがストロスの杖だろう。
特に仕掛けなどもなくあっさりと台座から動かせてしまった。少々あっけなかったがそこまで苦労せず手に入ったのはいいことだ。
「これでお父さんやお母さんを元に戻す事が出来るね」
「早く2人に会いたいね、お兄ちゃん」
無邪気にそう喜ぶ2人の顔を見て、早く再会させなきゃと強く決意した。これ以上空白の時間ができてしまわぬように。
*
ストロスの杖は入手したし後はアベルとビアンカの行方を辿るだけだけど、グランバニアに帰る頃には既にその場所は判明していた。世界有数の大富豪ルドマンさんの情報収集力の凄まじさを見せつけられた感じだ。
「世界各地から集められた光の教団の目撃情報、もとい彼らが売っていた様々な物品の流れを追っていくうちにアベル様の行方を突き止めました。彼が今いる場所は富豪のブルジオ様の邸宅でございます」
グランバニアに訪れたルドマンさんの使者からの報告を受けた瞬間胸の中に希望が湧き上がるのを感じた。ビアンカの行方までは流石に掴めなかったみたいだけれどもこれは大きな前進だ。
やっと、これで助けられる。
そう思うだけで目の前が輝いて見えた。
[8]前話 前書き [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ