純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 10
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。
「さて、と」
取手から手を離した元上司様は、その場で私達に向き直った。
にやぁああ〜〜あり……と、悪魔も裸足で逃げ出しかねない、途轍もなく邪悪な笑みを私に向ける。
「ご気分はいかがかしらあ? ねえ? 皆が聴いている中で、我らが主神に体当たり宣言をされた、元神父のクロスツェルさぁああん?」
悪意だ。
プリシラの楽し気な言動にも表情にも、根深い悪意しか感じられない。
「あー……、なんというかまあ…………『おめでとう』?」
「ロザリアさんは強い女性ですね。誰かと向かい合って真正面からすべてを受け止めたいなんて、常人にはなかなか言えません。しかも他人が居る席でそれを認めてしまえるとは。彼女の意思の強さは、浮浪児時代に身に付けたものなのでしょうか」
「いや、ロザリア様は、ここに我らが居ることなど知らぬのではないか? ほれ、全開にせん限り、扉自体が遮蔽物になってあっちからもこっちからも室内はよく見えんのだし」
「あら、リーシェさん。私は扉を開く前にきちんとお伝えしましたわよ? 御用がおありでしたら隣の部屋にお声掛けください。誰か一人は必ず控えておりますので、とね!」
「プリシラ様? それって、まさに今現在ここに複数人が集まっているとは思わないやつですよね?」
「肝心な前提が抜けているわ、ミートリッテ。中央教会に居ない筈の人外を含む集団が、その他大勢と一緒の調理場とか、常時報告書が飛び交っている次期大司教の執務室で、堂々と百合根の下拵えなんかしてると思う?」
「思わんな」
「思いませんね」
「思わぬな」
「……ですよね。だから外から来た皆さんはロザリア様とレゾネクトさんを除く全員でここに集まって、密かに作業してるんですし」
「うふふ。納得してもらえたわね。フィレスさんが仰る通り、ロザリア様はこの状況をご存知の上で、あのように心情をお認めくださっていたのよ! 決して、私が言わせたわけではなく、ね!」
ええ、そうですね。
多少暴論の気を感じないでもないですが、事前にロザリアと状況を確認し合っていたのなら、プリシラの行いに礼節違反や過失は何一つありません。
おそらく、ロザリアがうっかりしていた。
ただ、それだけの話。
それだけの話、なのです、が。
(扉を開くまでどんな話をしていたのかは知りませんが、ちょっぴり貴女を恨めしく思っても良いでしょうか、ロザリア)
室内を染める、柔らかすぎる雰囲気。
私を見つめる生温い視線。
さすがにこれは……いたたまれない……。
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