純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 10
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頷くプリシラに、私も頷いて言葉を続ける。
「あんたもさっき言っただろ? 多くの人間は自身が傷付けられれば周囲を恨むって。私も同じだよ。アイツが死んだ後も、私は私の意思も事情も一切合切無視して私を縛り付けた二人を、延々と恨んで、憎んで、嫌い続ける。でもさ。クロスツェルには、感謝してるんだ。アイツの心情がどうであれ、私を見つけて救い上げてくれた事実だけは、何があっても変わらないから」
クロスツェルの教会で世話になる前。
割れたガラス瓶で脅したあの日、あの時。
私の手を離してさえいればきっと、アイツはその後も傷付かずに済んだ。
善きように導く、なんて、職業柄口を衝いて出ただけじゃないのか、って感じの約束を律儀に守ったりしなければ、アイツは三十代四十代、五十代の立派なおっさんになっても、偽りの女神を妄信してる神父のまま、のんきにへらへらと笑いながら生きていけただろう。
…………多分。
あの性格だし、絶対とは言い切れないけど。
少なくとも、人外生物絡みで命を落とすはめにはならなかった筈。
私に関わろうとしたのは、アイツの勝手だ。
生命をすり減らしたのも、アイツの勝手。
けど、その勝手さに、私達は助けられたし。
アイツは私達を助ける為に、取り返しがつかない痛手を被ってしまった。
私達の存在が、本来あるべきアイツの未来を奪ったんだ。
そこだけは、どうしたって目を逸らせない。
逸らしちゃいけない。
「だからこそ。私は、言葉通り自身の命を削ってまで私を探し出してくれたアイツと。底無しの泥沼に沈みかけてた私とアリアを引っ張り上げてくれたクロスツェルの気持ちと、ちゃんと向き合いたい。しっかり向かい合って、互いの良い所も悪い所も全部、真っ正面から受け止めたいんだ。アイツは、どう足掻いても私と同じ未来を生きられない。私は、恩人でもあるアイツの死を見届け、自分の無力さを思い知る。そんな最悪な最後を完遂する為に、今、一緒に居るんだよ」
赦しはしない。かと言って、突き放したりもしない。
先が無いと自覚してるからこそ、残された時間を一緒に過ごすこと自体が私もアイツも楽になれない唯一の方法。
「救いようがない変態バカ男だと判っててもアイツを見捨てられない優しいお姉さんには、少し残念な回答かも知れないけどさ。これがクロスツェルに対する私の本音で、私とクロスツェルの関係を示すすべてだ。……悪いな」
アイツが好きだから傍に居る、とか。
誰に期待されようが懇願されようが、そんな言葉は返してやれない。
好意一つでなんでも赦せる聖人君子じゃないんだ。私は。
「……………………」
「……………………」
沈黙を一拍挿み、私をじっと見上
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