アインクラッド 後編
還魂の喚び声
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
げた勢いのまま、大太刀を右頬の脇に引き絞るように構える。片手剣の《ヴォーパルストライク》にも似た構えから放たれるのは、カタナスキル上位重単発技《霹靂神》――
「……ッ」
《ブラストウイングコート》の制約により防具を装備できないマサキにとって、攻略組レベルの重単発技は文字通り一撃必殺となりうる。その脅威を正しく認識したマサキは、今度は自発的にその剣閃から目を外した。ジュンの背後、がら空きになった空間を強く思い描き、《瞬風》を発動させる。すると次の瞬間には、マサキは今の今まで正面から見ていたジュンの、コートに覆われた背中を視界に捉えていた。
マサキは《軽業》スキル派生Mod《スカイ・ラン》を使って空中を蹴る。スキル上位の、それも重単発技ともなればジュンには相応の技後硬直が課せられる。一撃浴びせてお釣りがくるほどの時間だ。マサキは急激な気圧の変化によって生じる乾いた音を追い抜き、ジュンの背後斜め頭上から肉薄。鞘に戻しておいた蒼風を鞘走らせ、風刀スキル単発重攻撃技《春嵐》でジュンの背中を真横に切り払った――はずだった。
蒼風の刀身が確かにジュンの体躯を切り裂いた感覚得たのとほぼ同時に、マサキは腹部に強い衝撃を受けた。
「かは……ッ!?」
身体をくの字に折られ、図らずもその衝撃が加えられた自身の腹部を目にすることになったマサキは、大太刀の柄が自分の鳩尾に沈み込んでいるのを見た。そしてその柄は、ソードスキルが発動していることを表す白いライトエフェクトを纏っている。
――有り得ない。
《霹靂神》の技後硬直は、こんなに早く終わるようなものではない。次のソードスキルはおろか、ソードスキルを使わない単なる攻撃でさえ間に合うようなタイミングではないのだ。しかし、マサキの視線の先にある大太刀は、ソードスキルを発動した証拠であるライトエフェクトを間違いなく放っている。
そしてマサキの知る限り、柄での後方殴打から始まるカタナスキルは一つだけだ。カタナスキル二連撃技《雪蛍》。続く二撃目は、振り返りざまの逆袈裟斬り――。
マサキは崩れおちかけていた足腰に精一杯の力を込めて左へ跳ぶが、追いすがるように振るわれた大太刀の刃はマサキの胴を深々と切り裂いた。
受身も取れず、肩から石畳に落下したマサキは、追撃を警戒して素早く立ち上がり蒼風を構える。幸いにもジュンにその場から動く気配はない。今の技後硬直を無視したかのような動きを使えば更に攻撃を続けることは簡単だったはずだが、それをしなかったのは自分が圧倒的優位にいるという確信故の油断か、あるいは綿密に計算されたトラップ網によって守られたあの位置を離れるリスクを嫌ったのか。事実、この着地ポイントはマサキが回廊結晶によってこの通路に降り
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ