暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 9
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「おい」

 寝坊するくらい旅疲れしてる奴を扱き使うなよ。
 ほんの数十秒前、苦い顔でうつむいてたのはなんだったんだ。

「なら、こちらの仕事が終わってからで良いだろう。俺はロザリアが呼べばいつでも、どこに居ても繋がる」
「それもそうね。いいわ。その話、乗った!」
「乗った! じゃねぇよ。まずはクロスツェル本人に意思確認を取れよ」

 断るどころか、一考の余地すら無しって。
 どんな従属契約交わしてんだ、お前らは。
 そりゃ、プリシラやアーレストに言われたら、どんな内容でも最終的には頷くんだろうけどさ。

「クロちゃんには後で私から伝えておくから、よろしくね。レゾにゃん!」

 私のツッコミは無視か。

「分かった」
「お前の懐柔のされ方はいったいどうなってんだ……って、おい、コラ! ちょい待て、バカ親父!」
「なんだ?」

 話がまとまったと見てか、逃げるようにさっさと空間を移動しようとしたレゾネクトが、まだ何かあるのかと言いたげな目で私の顔を見据える。

 …………マジか?
 お前、本気でそこまで堕ちたっていうのか?

 怪訝そうに首を傾げる幼児の、表も裏も無いまっすぐな目線が、私の胸に否応なく現実を知らしめる。
 諦めて認めてしまえば楽になれるぞと、無言のうちに囁きかけてくる。

 だが、しかし。
 無理だ。
 こんな現実、私には到底受け入れられそうにない。

 ふざけた呼び方は、ギリギリ『愛称』で片付けられる範囲だ。
 それくらいならまだ良い。
 良くはないが、良いと思い込もう。
 どう考えても、やめろと言ってやめてくれる相手じゃないしな。

 けど。
 けど、せめてっ??


「服装に関しては目を瞑る。だからせめて! せめてその頭に巻き付けてるリボンだけは外してから行ってくれ! 頼む??」

「…………………………………………っ??」


 必死すぎる叫び声を聴いた瞬間の、驚愕と絶望に染まった青白い顔を。
 私は一生忘れない。

 てか、理由が理由なだけに、忘れたくても忘れられない気がする。

「(ちぃっ! 気付かれたか!)」
「小声のつもりか知らんが、バッチリ聴こえてるからな」
「あらまあ、私ったら。うふふっ」

 慌ててリボンを外すバカ親父の前で。
 口元を隠しながら、肩を揺らして楽しげに笑うプリシラ。

 この女、どうして高位聖職者に選ばれたんだろう……。




※そんなわけで、マリア達の前に現れたレゾネクトは、無事にいつも通りの服装でした※

vol.12 【(なに、この可愛い生き物……っ!)×2】

 それは、次期大司教第一補佐の部屋で百合根を下拵え中の一幕だった。
 ガラス製のローテーブルを挟んで
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