純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 9
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?」
「百合根の料理が、ですか? それなら」
「違う」
分配が始まるのは夜からですし、調理場へ行けば大量にありますわ。
とか言おうとしたプリシラの声を、レゾネクトが頭を振って制した。
私が何を言いたいのか、理解したらしい。
「クロスツェルが作った分は、もう無い」
「………… あ」
プリシラも、レゾネクトの言葉で気付いたらしい。
まん丸になった目を私に向けて、一瞬硬直する。
やっぱり、そこら辺も説明してたんだな。
「そっか。無いんじゃ仕方ないな」
来年は食べられない、『クロスツェルが作った』百合根の料理。
クロスツェルと同じ時期、同じ場所で育ったもう一人の猪、アーレストにとって、それはきっと特別な物だろうし。
母さんにも、アイツが作ったアリア関係の飯を食べてほしいなって……、ちょっと思い付いただけだ。無い物を持ってってくれとは言えん。
「迂闊でしたわ。正直、そこまで気が回りませんでした」
「いや、人外生物と顔を合わせて数時間で、そんな気の遣い方されてもな。どんだけ順応早いんだって話だよ」
今は元気に見えるクロスツェルの死を前提にした根回しなんか、この猪の姉ちゃんにできるわけがない。
してほしくもない。
「納得するな。あんたはそれで良いんだ」
「ロザリア様……」
唇を噛みながらうつむくプリシラに、私の思い付きなんか気にすんな、と言ってはみたものの。
正真正銘、最後の機会なだけに、やっぱりちょっと残念だ。
お前今からあっちに行って作ってこいっつっても、猪の兄ちゃん相手じゃクロスツェルのほうが嫌がるだろうしな。
「俺が作れば良いだろう」
「「は?」」
「クロスツェルと感覚を繋げた俺が向こうで作れば、クロスツェルの料理と変わらない筈だが。違うか?」
「感覚を、繋げる?」
のそっと顔を上げたプリシラが、レゾネクトの頭部を見て首を傾げる。
なるほど、『空間』の力を応用するのか。
それなら……
けど、意識や魂を運ぶんじゃなく『感覚を繋げる』って、なんなんだ?
意味が解らん。
「俺の手足と五感を一時的にクロスツェルに貸す。クロスツェルが俺の体を遠隔操作する状態だな」
「待て。お前の体を貸す? のは良いとして。その間、クロスツェルの体はどうなる? 変な負担とかないだろうな」
「会話くらいならできる。感覚に慣れるまで集中する必要はあるだろうが、生命力を消耗するほどではない筈だ。心配なら寝転ばせておけば良い」
「寝転ばせるなんて、それはダメよ! クロちゃんには夜まで裏方の仕事に従事してもらうって決めてるんだから!」
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