番外編その1 鉄砲水と絆の英雄
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ってチャクチャルさん側から無理言ってくるのって新鮮だなってさ。よし、行くよ!」
軽く息を吸い、開いたままの空間の穴に意を決して飛び込む。ほんの1瞬の浮遊感ののち、再び地に足が付き体が重力に引っ張られる地球人としておなじみの感覚。あ、意外と到着早いのね。
「えっと……」
あたりを見回す。ここはどこだろう、なんて悩むことはなかった。見覚えのある噴水に、その中央から延びる時計。なんのことはない、生まれた時から見慣れてきた童実野町の一角だ。ただ気になることに、まだ日も高いというのにたった3人しか人影が見当たらない。僕がちょうど真後ろに到着したため、彼らはまだ僕の存在に気づいていないようだ。
まず1人目、あれはもう見ただけで分かる。あの特徴的な髪型は、デュエルキング武藤遊戯しかありえない。そしてその横の2人目だけど、あの茶髪もさることながらオシリスレッドの学生服をわざわざこんなアカデミアから遠く離れた地で着ているということは、その手のコスプレでなければ十代だろう。そして3人目は……。
「『お前か!』」
遊戯さんに負けず劣らず個性的な髪型で、赤いバイクのようなマシンを手で押している3人目。その横顔を、そしてその瞳を見た瞬間、理屈ではなくダークシグナーの本能が叫びだした。『あれ』だ。『あれ』がチャクチャルさんはじめとする地縛神にとって、そして自動的に僕にとっても不倶戴天の敵となる存在、シグナーだ。
突然の叫びに驚いた3人が一斉にこちらを向き、驚愕と困惑の視線が痛いほどに突き刺さる。そんなもの気にする余裕もなくシグナーに詰め寄ろうとしたが、それよりも先に反応したのは十代だった。明るく片手をあげてこちらに駆け寄ろうとして、途中で思いとどまり思案顔になる。
「久しぶりだな、清明……あ、でも今の時代だと俺のこともまだ知らないのか。な、なんて説明するかなー……」
「いや、わかるよ十代。卒業式以来だね?」
今のセリフから推測するに、どうやらこの時代は過去。それも少なく見積もっても僕がまだ、アカデミアに入学するより以前の時期のようだ。それはともかく、そう返されるのはさすがの十代も予想外だったらしい。
「清明?お前、いったい……」
「悪いね。色々話したいことはあるけども、今はちょっと取り込み中なのよ」
「おい、お前は……」
遊戯さんも何か言いかけていたが、超ど級の無礼を承知で言わせてもらえば今はそれどころではない。まっすぐにその3人目の名前も知らないシグナーへと距離を詰め、同時に全身に紫の痣を走らせ空中から灰色のフード付きローブを自動生成する。白目と黒目はとうに反転し、これまた紫の光を放っていることだろう。直立不動の鋭いまなざしでそれを見つめているシグナーも、僕が何であるかは分かったらしい。それが宿命とはいえ逃
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