番外編その1 鉄砲水と絆の英雄
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いえど、この世界であまり好き放題されて黙っているわけにもいくまい』
「ああそうか……じゃ、一発シメに行きますかってこと?」
『正義の味方の真似事も、たまには悪くないだろう。第一私としても、かつての仇敵がいいように使われているというのはあまり気分のいいものではないからな』
「ここでアクション起こしておけば、うまくいけば次のシグナーに対して恩も売っておけるしね」
『そういうことだ。よくわかってるじゃないか』
そういうことなら納得だ。どうせ忙しくなるだろうし、ともかく今は体を休めて次に備えようと椅子に深く腰掛けなおす。
その瞬間、不意に地面が大きく揺れた。幸いにもその揺れはほんの1瞬で治まったが、反射的に周りの様子を見渡す。あんな変な揺れ方が、ただの地震なわけがない。案の定この揺れの原因、なんて小難しいことは考えるまでもなくはっきりと見えた。ついさっきまでこの街の象徴であった海馬コーポレーションのビルがあるはずの場所が、揺らいでいた。比喩でもなんでもなく、まるで存在そのものが消えかかっているかのように不安定に揺らぎ、消えかかっている。どんな種類の攻撃を受けているのかはわからないが、1つだけはっきりしていることがある。狙われたのは、今飛び出そうとしていたこの童実野町だった。
「ねえ、チャクチャルさん」
『わからん』
あれは一体、何が起きているのか。そんな疑問も質問どころか呼びかけの時点でばっさりと言い切られる。なんだそりゃ、と閉口しかかったタイミングを見計らったかのようにだが、と言葉が続く。
『あの揺らぎ、そして存在の希薄化。なあ、マスター。あの時と似ている、そうは思わないか?』
精一杯にぼかした言い方は、この神様なりのせめてもの気遣いだろうか。目の前で起きている異変にもう1度だけ視線を向けるといまだに癒えない傷、思い出したくもない何よりも大切な記憶を呼び起こす。
確かに似ている、といえば似ている。彼女が、河風現が僕の腕の中で消えていったあの時と。
「……でも、それとこれと何の関係が」
『あくまで私の仮説だが、仮にあの時と同じように海馬コーポレーションそのものが消えようとしているのなら?あの女は消滅後、我々以外の歴史から完全にその姿を消した。それと同じ歴史改変が、どこかの時代で起きているのなら?』
「歴史が……!?」
その単語の意味するものに、言葉を失う。三沢の編み出したなんたら理論によれば、時間移動は決して夢物語ではない。それはあの、ダークネスとの戦いでも証明されたことだ。だけどそれを成し遂げるには、想像もできないほどのエネルギーとそれを扱う膨大な知識が必要となる。それはこの邪神、チャクチャルさんですら成し遂げられないほどのことだ。それをいとも簡単に、それも海馬コーポレーションという歴史上とん
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