番外編その1 鉄砲水と絆の英雄
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くらかの食料を用意し、なけなしの現金を財布に詰め、大切な腕輪……水妖式デュエルディスクを装着する。親父に今日は店を手伝えない旨を伝え、百の嫌味と千の小言が飛んでくる前に靴を履いてさっさと朝の街に飛び出した。ここから空港に行くためには、まず電車に乗らねばならない。自家用ジェットのある海場コーポレーションやヘリ持ちの万丈目グループとは違い、遊野家はあくまでただの庶民だ。
「飛行機かー……高いんだよねあれ」
『なんなら私が乗せていくか?実体化しても構わないぞ』
「いや、遠慮しとくよ」
恐ろしいことに、チャクチャルさんはいつもの軽口をたたいているのではない。ド派手に実体化してあちこちから見られるリスクを考えたうえで、なおそれでも構わないからと大真面目に提案しているのだ。いったい、あの写真から僕の知らない何を読み取ったんだか。いずれにせよ、この暗躍好きな神様にここまで言わせる何かが、この写真にはあるのだろう。なら、僕がそれを疑う理由は何一つない。
『……マスター、いいか?』
ここから空港へ行くには、まず電車に乗らねばならない。駅に向かう途中で、チャクチャルさんの声が聞こえる。ようやく口を開く気になったらしい神様が、ぽつぽつと語りだした。
『私があの写真にこだわる理由だが。マスターのことだ、私の口から出たスターダスト・ドラゴンの名は聞き逃してはいないだろう……無言は肯定と受け取るぞ?そのドラゴンだが、あれはシンクロモンスターだ。それも太古に我らが故郷、ナスカの地において赤き龍の、そしてシグナーの手足となり我ら地縛神、ひいてはあの先代も含めたダークシグナー達と死闘を繰り広げた侮りがたき6体の竜のうち1体だ』
「シンっ……!!」
思わず叫びかけたところで、周りから一斉に向けられた奇異の視線に気が付いた。愛想笑いを浮かべながらどうにか平静を装い、ゆっくりと大きく息を吐く。
「なるほどね。それで、こんなに急いでたんだ」
『ああ。私も目を疑ったが、奴らの姿を見間違えはしない。なぜシンクロモンスターがこの時代に顕現しているのか。確かにそこも解せないが、もっとわからないことがある。私の知る彼の竜は仲間のため、守りのためにその力を振るうことはあれど、こんな無差別な破壊のために戦うことは決して良しとはしなかったはずだ』
「あのほら、遊や富野みたいに別の世界から精霊の入ってないカードを持ってきたんじゃないの?」
シンクロモンスターといえば真っ先に思い出す、僕にその使い方を教えてくれた異世界からの来訪者たち。あれ以来彼らやそのお仲間に会ってはいないが、その記憶は今もはっきりと残っている。
『それならそれで筋は通るし、その意味では話が楽になるのだがな。だが困ったことにその場合、別の問題が提起される。いくら異世界からの客人と
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