暁 〜小説投稿サイト〜
Evil Revenger 復讐の女魔導士
宿命の戦いへ
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の谷の作戦の時から、兄との直接対決をまったく予想しなかったわけではない。
 だがあの作戦も、元々は崖上からの援護だけと聞いていたし、今後も数万人がぶつかる広い戦場で、たった2人が偶然相見えることなどそうそうないと、心のどこかで逃げていたのかもしれない。
 あの谷でも、結果的に剣を振るう羽目になったのだ。
 少し間違えば、あの時兄と出会い、剣を交えていたかもしれない。
 あの初陣で兄と戦うことになっていたら、私は落ち着いていられただろうか?
 今、戦う前からこんなに震えていては、初陣での交戦はかなり厳しいものになっただろうと思う。
 そう考えると、今回の戦いに参加したこと自体、かなり危ういことだと思えた。
「ネモ。私は兄さんに勝てると思う?」
 作戦が始まる前に、もう何度も似たような質問をした気がする。
 だが、この場で自分を落ち着かせるためには、聞かずにはいられなかった。
「俺は、ヴィレント・クローティスの戦いぶりを、直接見たことはない。だから推測しか言えないぞ?」
 ネモは正直にそう答えた。
 構わないから聞かせて、と私は返した。
 ネモは頷いて、
「俺の見解では、今のお前に単独で勝てるのは、魔王領内でも魔王様ぐらいだと思っている」
 もちろん現状は、俺が盾の制御を行った場合に限りだが、と彼は付け加える。
「それでも、まだ不安がある」
「それは……、もし兄さんが、魔王より強かったら……?」
 彼は首を横に振った。
「俺が心配しているのは、そこじゃない」
 彼は続ける。
「ヴィレント・クローティスの活躍を聞いたとき、お前と瓜二つだと、俺は思ったよ。お前の初陣の活躍を喜んでいたら、敵陣にまでお前がもう1人現れたような気分だった」
 長い間、恐れてきた兄と瓜二つだと言われるのは、少し複雑な気持ちだった。
「お前達兄妹は、それぞれに比肩しうる才能を持っている。片方は実戦で長い時間をかけてじっくり腕を磨き、片方は訓練によって短期間で急激に成長した」
 ネモは、そう分析する。
「俺は、お前が実力でヴィレントより劣るとは思っていない。俺が心配しているのは、経験の差だ」
 経験……。
 確かに兄は、両親が死んだ以降から、長い間、戦い続けていたはずだった。
「お前は、次でまだ2度目の戦場だ。圧倒的に経験が足りていない。何か不測の事態が起きた時、お前はそれでも冷静でいられるか?」
 不測の事態、って何? と私は問い返す。
「例えば、俺が戦死した時だ。盾の制御はできなくなる。その時、お前は冷静に判断して、戦いを継続するか、撤退するか、選べるか?」
 予想外の質問に、私は面食らう。
「えっ、なにそれ? 嫌だよ、ネモ。そんなこと考えないで! 私、あなたがいないと生きていけない!」
 思わす彼の両肩を掴み、詰め寄って、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ