宿命の戦いへ
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わかっていれば、どうとでもなる。
兄ヴィレントの予想外の強さに驚きこそしたものの、所詮1人の人間。
率いているのも、100人に満たない小数部隊だ。
そう思い、余裕を持って迎えた、2度目、3度目の戦い。
彼らは初戦以上の苦汁を、味わうことになった。
2度目、兄の部隊の出現を的確に読み、その3倍近い部隊を差し向けて取り囲んだ。
倒せずともよい、主力同士の戦いの間、奴らを足止めできるだけでも充分だと睨んでいた。
だが、3倍の兵力を持つその部隊は、あっさりと突破を許してしまった。
敵にしてみれば、別に向かってくる相手全てを倒す必要はない。
突破できる場所を見つけて駆け抜け、こちらの主力の隊列をかき乱すことができれば、兄の役目は果たされている、ということのようだった。
そして、3度目、こちらの軍は重装兵部隊を差し向けた。
倒すことは考えなくてもよい。
重い甲冑を着込んで大盾を構えたその部隊は、簡単に倒れることはなく、歩兵主体の兄の部隊を確実に足止めするはずだった。
しかし、兄は重装兵部隊を確認すると、それを無視し、あっさりと迂回して主力に襲い掛かったのだという。
機動力で劣る鈍重な重装兵達は、それを食い止められなかった。
数で勝る敵を蹴散らす突破力と少人数の軽装歩兵による機動力を併せ持つ、それが兄の率いる部隊だった。
「あれを殲滅するには、大部隊で包囲して一斉に叩くしかない」
大隊長は言った。
だがそれをすれば、今度は敵主力部隊への対応ができなくなる。
初戦の前ならあるいは、全部隊を二分すればそれも可能だったはずなのだが、数を減らされた今の状況で部隊を半分に分ければ、敵主力を食い止められない。
八方ふさがりの状況だった。
そこで、兄の部隊をわずかな手勢で食い止められる方法があると進言したのが、小隊長の1人、ロイオンだったそうだ。
その時上がったのが、私達2人の名前だったらしい。
彼は魔の谷での私達の戦いぶりから、兄を止められる可能性があると判断したのだという。
「今、この砦にいる兵士で、ヴィレントに対抗しうるのは、この2人しかいない!」
ロイオンは右手を広げ、私達の前でそう力説した。
そして今、私達は戦場にいる。
大部隊の最後尾。
まだ戦いは始まっていない。
斥候の兵士が兄の潜伏場所を探し出し、私達に伝えてくれる手筈だった。
「緊張しすぎだ。顔が強張っているぞ。もう少し肩の力を抜け」
横からネモにそう声を掛けられて、はっとする。
私は緊張していることを、自覚していなかった。
大きく息を吐く。
掌を目の前に広げると、震えているのがわかった。
私、兄さんと遂に、直接戦うんだ……
恐れ、避け続けたあの兄と、直接、真っ向から。
魔
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