暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第265話 詩乃とチョコレート
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〜其々のバレンタイン 詩乃ver〜
それは聖バレンタインデーの夜。
朝田詩乃は、宿題を手早く済ませた後に、夕食を作り、簡素ではあるが栄養バランスの整った食事を済ませていた。
さぁ、これからお風呂に入り、明日の準備を整えて就寝に着くなり、ALOやGGOに赴くなりするいつもの時間帯。
だけど、今日はいつもとは違う。まだ台所に名残が残っているのを感じていた。仄かに漂う甘い香りも。夕食の匂いに紛れ、掻き消されてもおかしくないのに まだしっかりと感じる事が出来る。肌でも感じる事が出来る。
そして 想い馳せていた。
「……良かった。ちゃんと渡せて。色々と合ったけど、ほんと良かった」
詩乃はそっと自身の胸に手を当てた。
とくんっ、とくんっ…… と徐々に静まる鼓動。
夕食を作っている間も、食べている間もずっとずっと高鳴っていた鼓動。それを漸く収め切る事が出来た。
そして、詩乃は自分自身を褒める事が出来た。今までそんな事無かったけど 今回はしっかりと渡せたから。ハプニングがあり、そして 少しばかり恥ずかしい事だってあったけれど、しっかりと渡せて、感謝の言葉も伝えられたから。
学校の帰りの事。
今日は2月14日のバレンタインデー。全国の女の子達が頑張る日だ。
それは、詩乃だって例外ではない。
彼女は今日装備をしっかりと整えているのだから。
その懐には一段と強力なアイテムを忍ばせている。どうやってクエストを成功させるか。ミスをせずに完遂出来るか、ひたすらそれだけを詩乃は考えながら下校をしていた。
そして、そんな上の空な状態での歩行は思いの外危ない。
ぼーっとしていて、上の空も同然な状態だから。
流石に、信号無視まではしないが それでも無視しなくとも、危険な事だってある。そう、例え片方が注意をしていても、事故とは起こりえるものだから。そう、危険運転をするドライバー。
詩乃は 信号が青なのをちらりと確認した後に横断歩道を渡ろうとした。
そこに迫るのは一台の原付。
備え付けた端末に目を向けていた為、信号に気付いていない様だった。
後一歩、踏み込めば――いわば攻撃範囲内に入ってしまうも同然。ここが
仮想世界
(
VRMMO
)
であるのなら、範囲は一直線上で読み易く、容易く避ける事が出来るだろう。だが生憎ここは現実世界だ。その上、詩乃は上の空。
その危険地帯に足を踏み入れようとしたその時だった。
「詩乃っ!!」
「っっ!?」
声が聞こえてきたかと思えば、ぎゅっ と強く身体を抱き、そして引き寄せられた。
華奢な詩乃の身体は、容易に足が宙を離れて、そして もつれる
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