初陣
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隊で進むことを困難にしていくのである。
魔王軍側は、この谷を戦場にすると決めた時、部隊を3つに分けていた。
大部隊が戦うには適さないこの場所。
こちらの主力をぶつけるのは、魔の谷を抜けた先と決め、だが、大部隊が戦うのに適さないこの谷を、何の損害もなく素通りさせてやる必要はないという判断だった。
今回は、地の利を生かして少数精鋭の部隊を配置し、一方的に損害を与えてから撤退するという作戦である。
敵軍の完全な殲滅が目的では、なかった。
私達は、その内の1部隊に配属されている。
一番少数となるその部隊は、今、険しい崖を登っていた。
部隊の全員が、崖を登りやすい軽装で、弓矢とショートソードを携えていた。
兵士は全員大柄で、逞しい体つきをしていた。
私が、この部隊で一番小柄なのは間違いないだろう。
ここに来るまでも、周りの兵士たちは、私を明らかに訝しむような眼で見ていた。
どうして、よそ者の小娘が付いてくるんだ? とでも言いたげだった。
それは、仕方のないことなのかもしれない。
私は今はまだ、何の戦果も上げていない。
ネモの推薦と、祖父である魔王の後押しにより、特例で部隊に組み込まれただけの小娘なのだ。
左下に見える山間道は、静かなものだった。
そこをベスフルの部隊が通れば、すぐにわかる。
崖の上から敵を待ち伏せし、頭上から弓矢を降らせ、反撃を受ける前に離脱する。
私達の部隊に与えられた任務だった。
谷に入る前の部隊長の説明を思い出す。
「我々は、このポイントで敵部隊を待ち伏せる」
そう言って、部隊長は地図の一箇所を指した。
そこは、敵から発見されにくく、また発見されても、よじ登るには困難な断崖絶壁の上だという。
残る2部隊が、反対側の丘から突撃し、一撃離脱を試みる。
それを空から矢で援護し、2部隊の離脱を確認したところで、こちらも撤退するという手筈になっていた。
待ち伏せのポイントまでは、半日ほど歩くと聞いている。
だが──
半日経たぬうちに、私達の部隊は足を止めることになった。
先頭が足を止め、後ろを歩く私達に合図を送る。
敵を発見したという合図だった。
全員が息をひそめ、見つからぬよう、体を伏せる。
見ると、左下の丘の上を、ベスフルの兵士たちが歩いているのが見えた。
人数は、こちらよりはわずかに多いが、小部隊だった。
「敵も、待ち伏せに備えて、偵察部隊を出していたようだな」
ネモが小声でささやいた。
待ち伏せポイントに到着する前に、敵を発見した。
それはすなわち、敵の進軍速度は、こちらが思っていたより早いということだった。
まだ敵は、こちらに気づいていないようだ。
「今すぐ、仕掛けますか?」
部隊長たちが相談す
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