第四章
[8]前話 [2]次話
「あの方はどの奥方様もです」
「殺められていませんね」
「あの方は非常に心優しい方なのです」
そうだというのだ。
「私達に対しても」
「それはわかります、あの方は」
「非常に心優しい方ですね」
「誰よりも」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「どの様な方でもです」
「その手にかけられることは」
「ありません」
こうマリーに話した。
「あの方は」
「そうですね、ですが」
「これまでの奥方様はどの方も不幸があったのです」
「その不幸は」
「最初の奥方様は癌でした」
「癌で」
「お若い時に。お若いだけに」
癌細胞は若ければ若い程その動きが活発になる、それでというのだ。
「もう発見された時には手のほどこし様がなく」
「それでなのですか」
「お亡くなりになられました」
結婚してすぐにというのだ。
「残念ながら」
「そうだったのですか」
「はい、そして悲しみに沈まれていました」
最初の妻を亡くしたその時はだ、ロシナンテはそうなっていたというのだ。
「見ている私も他の者もどう声をかけていいか」
「そう思うまでにですか」
「酷い悲しみでした」
「そうだったのですか」
「そして二度目の奥方様もそれからの奥方様も」
「どの方もですか」
「はい、病や事故等で」
そうした不慮のことでというのだ。
「亡くなられています、そしてその都度」
「あの人は」
「酷く悲しまれました」
「愛しておられたからですね」
「ですから奥様にです」
マリー、彼女にとというのだ。
「何としてもです」
「生きていて欲しいとですか」
「それも長く」
そう思うからだというのだ。
「ですから」
「私にですか」
「厳重なまでにです」
食事や安全、そうしたことにというのだ。
「お気遣いをされているのです」
「そうでしたか」
「旦那様の噂は私共も聞いています」
これまでの妻達を次々と殺している殺人狂、その話をというのだ。
「ですがそれは」
「違うのですね」
「断じて」
こうマリーに言うのだった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ