第四章
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「その富を狙ってか」
「はい、夫婦で楊氏様の姉君をです」
「呪殺しようとしているか」
「そうかと。皇后様は常に厳しいことを言われるのでそれがお嫌なのでしょう」
「そういうことか」
「常に子の日に屋敷の中で祀っています」
その猫鬼をというのだ。
「このことも確かめました」
「成程。子の日か」
皇帝はその言葉に納得した顔になって頷いた。
「猫だからな」
「はい、子即ち鼠です」
「鼠は猫の餌だからな」
「その日に常に祀っています」
「わかった、ではすぐにだ」
ここまで聞いてだ、皇帝は断を下して言った。
「すぐに独孤陀とその妻の楊氏を捕らえよ」
「わかりました」
「そしてだ」
皇帝はさらに言った。
「二人はな」
「死をですか」
「妻の一族だ、ならばだ」
そうした血筋だからだとだ、皇帝はこう言った。
「毒を以てだ」
「自害をですね」
「勧めよ、よいな」
中国では古来より極めて身分の高い者は死罪としても処刑はしない。毒を渡しそれを飲ませて自害させるのだ。高貴な者に対する礼儀の一つだ。
「その様にせよ」
「わかりました」
このことに反対する朝廷の者は多かった、誰もが独孤陀の噂を聞いて剣呑なことと思っていたうえにその所業を聞いて許せないと思ってだ。むしろ自分達の方が皇帝に進言した。
「独孤陀様は危険過ぎます」
「皇后様の弟君ですが」
「放置出来ないかと」
「自害をお勧めすべきです」
「あそこまでの悪行を放置しては天下の害となります」
「朕もそのつもりだ」
皇帝も彼等に答えた。
「ここは断を下す」
「わかりました」
「ではその様に」
こうして独孤陀夫婦の死罪は決まった。だが。
彼の姉であり他ならぬ呪殺されようとしていた皇后、皇帝にとって最大の助言者である彼女が皇帝に言った。
「万歳老、弟のことですが」
「うむ、そなたも大変だったな」
「はい、しかしです」
「しかし、何だ」
「この度のことは私の家のことで公ではないです」
それが為にというのだ。
「確かに陀は罪を犯しました」
「左道を使ってな」
「それは許されぬことです」
「姉であるそなたを殺そうとしたのだ」
それならばというのだ。
「本来なら外戚といえど首を刎ねるところだった」
「はい、それをですね」
「毒酒を贈ってな」
「自害を勧めるというのですね」
「そうするのだ」
「ですが」
皇后はここで皇帝に言ったのだった。
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