第一章
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猫鬼
独孤陀は隋の皇帝の皇后である独孤皇后の異母弟だ。皇后が皇帝に常に謹言しよく支えていた為外戚となる彼の名もよく知られていた。
だがその彼についての話はいいものはなかった。
ある朝廷にも出入りしている高官が息子に言っていた。
「独孤陀様には近寄るでないぞ」
「といいますと」
「あの方はよい方ではない」
だからだというのだ。
「とかく悪い噂が多いのだ」
「一体どういった噂ですか」
「猫鬼というものを知っているか」
高官は息子に囁く様にして言った。
「それは」
「聞いたことがあります、確か蟲毒の一つで」
「うむ、猫の鬼を使う左道でな」
鬼即ち霊だというのだ。
「それを使って人を呪い殺す左道があってな」
「まさか独孤陀様は」
「母君が猫鬼を使う家系という」
それでというのだ。
「それでじゃ」
「あの方もですか」
「うむ、鬼を使ってな」
そうしてというのだ。
「気に入らぬ者を呪い殺しておるらしい」
「だからですか」
「あの方には近寄るでない」
我が子に剣呑な顔で話した。
「よいな」
「外戚の方でしかも」
「皇后様の弟君でな」
「家柄も確かな方ですが」
独孤氏は名家と言っていい家だ、むしろ皇室である楊氏よりいいのではと思われる程度である位だ。
「それでもですか」
「皇后様は立派な方だ」
いささか厳し過ぎるがとだ、高官は息子にこの言葉を自分の言葉の中に含ませてそのうえで我が子に話した。
「しかし弟君までそうとは限らない」
「それで、ですか」
「そうだ、あの方は母方の血が濃くな」
「呪術を好み弄し」
「そして何人が殺されておられる」
「そうした方だからですか」
「例え外戚であられてもな」
それでもというのだ。
「決して近寄るでないぞ」
「わかりました、その様にします」
息子も頷いた、そして実際に独孤陀には近寄らなかった。これはこの息子だけでなく。
宮中の多くの者が独孤陀には近寄ろうとしなかった、この話は宮中だけでなく隋中でも噂だった、だが皇帝はその話を聞いてもこう言うだけだった。
「噂に過ぎない、その噂を信じて動くとだ」
「誤る」
「だからだというのですね」
「朕はその噂を信じない」
最初からそうするとだ、皇帝は宮中の者達に言った。
「全くな」
「左様ですか」
「ではあの方はですか」
「このことについては」
「一切問わない」
全く、というのだ。
「そうする」
「しかしです」
高官の一人がここであえて皇帝に言った。
「あの方のご気質は」
「邪だというのだな」
「はい、皇后様の弟君ですが」
そうした重要な立場にいる者だがというのだ、当時外戚は中国においては漢代の頃から絶大な力
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