十六 蹉跌をきたす
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毒に侵されているいのなど眼中にないサソリは、チヨ目掛けて更なる砂鉄の雨を降らせようと指を動かす。
だが、妙な違和感がある。
異変を疑問に思うよりも前に、サソリに向かって【母】が刀を振りかぶった。
それを三代目風影で防ごうとする。
動きを封じようと、三代目風影の口が大きく開き、砂鉄の雨が────。
サソリ目掛けて、飛んできた。
「……ッ、」
咄嗟に回避したサソリは、岩壁に飛び移る。
チャクラで足を壁に貼り付けた状態のまま、彼は「どういうことだ…」と顔を顰めた。
いきなり、自分のほうへグルンと顔を向けた三代目風影をじっと見据える。
不意に、ギギギ…と不愉快な音がして、見下ろせば、傀儡化した肩の溝に砂鉄が入り込んでいた。
完全に動きを封じられたわけではないが、自由に身動ぎできない。
サソリ自身も傀儡人形なので、砂鉄で動きを止められてしまうのである。
皮肉なものだ、と自嘲しつつ、サソリは指に結んだチャクラ糸を確認した。きちんと三代目風影に繋がっている。
それなのに、どうして、主人である己に刃向かったのか。
そこでサソリはハッ、と眼を見開いた。
【父】と【母】の間に雑ざって、迫るいの。彼女の頭が項垂れている。
毒で顔をあげるのも儘ならないと思っていたが────。
「まさか、」
試しに、サソリはチャクラ糸を動かして、三代目風影の腕を持ち上げようとした。
腕は持ち上がる。だが、次の瞬間、サソリは岩壁を蹴った。
背後を振り仰ぐと、先ほどまで自分がいた場所の上空に、微小な砂鉄が霧のように漂っている。
穴が空いた岩壁から砂鉄でできた針が見えた。
サソリの推測は、その瞬間、確信へと変わった。
視線が、【父】と【母】の傍にいるいのを認める。
チヨに操られるも彼女自身が動いているかのように見えるが、おそらく、中身はからっぽだ。
【赤秘技・百機の操演】。チヨの【白秘技・十機近松の集】と対戦時に起きた出来事の再来。
あの時は、傀儡人形の何体かが犠牲になったが、いずれも、大した力を持たぬ傀儡だった。
だが、今は最も厄介であり、そして己の得物が奪われた事実に、サソリは苦々しげに眉を顰める。
今まであまり表情に変化が窺えなかったサソリが、最も感情を露わにした瞬間だった。
「小娘……俺の傀儡を乗っ取りやがったな…!!」
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