十六 蹉跌をきたす
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を前に、チヨは冷や汗を掻いた。
【人傀儡】最大の利点を発動したサソリは、己のお気に入りコレクションを見せびらかすかのように、くっと口角を吊り上げる。
絶体絶命の危機に、せめていのを逃がそうと促すチヨを尻目に、「もう遅いんだよっ!」とサソリは足を踏み込んだ。同時に、三代目風影の周囲に漂う砂鉄が微小な粒状へと変化してゆく。
「【砂鉄時雨】!!」
刹那、砂鉄の弾丸が一斉にチヨといのを襲う。
散弾の如く降り注ぐ砂鉄に、チヨは咄嗟に【母】を操る。
いのを助けた傀儡人形を操る傍ら、己自身は【父】の傀儡人形に鞭を振るわせた。砂鉄の弾丸を弾く。
鞭を自在に操って砂鉄の雨を次から次へと弾く【父】を目の当たりにしても、サソリは顔色ひとつ変えなかった。
それどころか、「おいおい…攻撃を受けてよかったのか?」と呆れの雑じった声をあげる。
【父】の傀儡人形を操って、【砂鉄時雨】の猛攻から身を守ったチヨは視界の端で、いのの安否を確認する。
【母】に庇われた彼女の無事な姿を認め、ほっと息をついた直後、指先に違和感を覚えた。
指を動かして、そこで初めて、己の失態に気づく。
鞭を持っている【父】の腕。
それが、ギギギ…と嫌な音を軋ませるばかりで動かない。
(砂鉄で……身動きが、)
「防ぐんじゃなく、かわすんだったな」
チヨの表情の変化に逸早く気づき、口許に弧を描く。一枚上手だった孫に、チヨは「ワシともあろうものが…」と歯噛みした。
砂鉄が傀儡人形の腕に潜り込んだせいで、動きを封じられたのだ。
三代目風影のこの術は回避しなければならないと知っていたはずなのに、いのを守るほうに気を取られて判断を誤ってしまった。
今回は幸運にも【父】の片腕と鞭だけで済んだが、三代目風影の磁力がある限り、傀儡人形では勝ち目がない。
(どうしたものか…)
いずれ、傀儡人形は三代目風影の砂鉄で動かなくなるだろう。しかしながら、いのはサソリの毒にやられて動かない。
どうにかこの形勢不利を打破しなければならない。
思案に暮れるチヨは、ふと、自分の前に立ちはだかった影に目を瞬かせた。
「いの…」
「チヨ婆様、私の身体を使ってください」
気丈にもチヨの傀儡になると発言するいのに、「しかし、おぬしの身体では…」とチヨは困惑する。毒に侵された身、立っているのもギリギリなはずだ。
カンクロウが三日間苦しみ悶えた毒。
その強い毒性は、治療したいの自身がよくわかっている。動けば動くほど毒の巡りは早まり、死へのカウントダウンも差し迫ってくる。
にもかかわらず、戦う意志を見せる彼女の背中に、チヨはどこかしら既視感を覚えた。
「そ
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