十六 蹉跌をきたす
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激しい攻防戦を繰り広げる傀儡人形。
それらの操り人は繊細且つ正確に指を素早く動かしている。目にも留まらぬ早業で踊るチャクラ糸が、その先に繋がる人形同士の戦闘を展開していた。
【父】と【母】を操るチヨが真剣な顔つきであるのに対し、サソリはどこか楽しげに三代目風影を操っている。祖母と孫の真剣勝負をどこか楽しんでいるかのような風情だった。
甲高い唸りが残響となって轟く。刃物と刃物がガチガチ噛み合って、火花が散った。
チヨの【父】【母】の傀儡二体と、サソリの三代目風影の、どちらも一歩も譲らぬ白熱した戦いを、いのは固唾を呑んで見つめた。三体の傀儡、特に三代目風影を注意深く観察する。
毒で、指一本自由に動けぬ我が身を、いのは苛立たしげに見下ろした。自分を庇って戦うチヨの小さな背中の影で、足手纏いの己を叱咤する。
(……今、修行の成果を見せないと、)
いのの瞳に強い決意の色が宿ると同時に、人形同士が一斉に離れた。激しい金切り音が未だ残る中、人形はそれぞれ傀儡師の許へ戻っていく。
双方の持つ得物の歯零れが激しい戦闘を露わにしていた。
チヨの人形である【父】と【母】のぶっつり千切れた鞭とボロボロに欠けた刀に、視線をやったサソリは、次いで己の傀儡を見た。歯車も仕込み武器も、もはや見る影もないほど刃部分が丸みを帯びており、使い物にならなくなっている。
反してチヨは、次の攻撃の対策として、即座に【父】と【母】の新たな仕込み武器を二体の腕から出現させた。今度は寸前とは逆で、【父】が鞭を手にし、【母】は刀を構える。
武器として成り立たなくなった三代目風影の得物を一瞥した後、互いの武器を入れ替えたチヨの二体の人形を見て、「少しはいじってるみたいだな…」とサソリは双眸を細めた。
「グレードアップしてんじゃねぇか…面白い。それなら俺もお礼に、懐かしいモノを披露してやるよ」
サソリの言葉に、油断なく構えていたチヨの片眉がピクリと動いた。嫌な予感がする。
チヨの怪訝な視線の先で、三代目風影がカタカタカタと音を鳴らして口を開いた。
そこから漏れ出すそれらに、顔を顰める。予感が的中したと、チヨは悟った。
「やはり、その傀儡……三代目の術を、」
「久しぶりだろ。この術で三代目風影は『最強』と謳われたんだからな」
砂隠れの里で最も恐れられた武器────『砂鉄』。
練り込んだチャクラを磁力に変えることができる特異体質から、三代目風影が編み出した術だ。あらゆる形状に砂鉄を変化させ、状況に応じた武器を作り出す。
自身が操る『父』と『母』の普通の傀儡人形とは根本的に違う。
生前のチャクラを宿した人傀儡の三代目風影
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