ネモ
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明を捨てて、両手で応戦した。
それでも、劣勢なのは変わらない。
ネモは、相手の爪と牙を防ぐだけで手一杯のようだった。
「あの女も、こいつにまったく刃が立たなかったんだぜ? 魔王様と渡り合えるとか、寝言もいいとこだ」
ルンフェスが嘲笑う。
助けに入らなければ、ネモがやられてしまう。
そう思っても、足がすくんで動かなかった。
あの獣に襲われた時の恐怖は、まだ抜けていない。
「こんな獣など、すぐに相手にならなくなるさ。あいつの才能は、それほどだ」
必死に、攻撃を防ぎながらも、ネモはそう答えた。
遂に、ヘルハウンドの爪が、ネモの左肩を捉えた。
「ぐっ……!?」
呻き声を漏らすネモに、ヘルハウンドは容赦なく跳びかかった。
「!?」
仰向けに組み伏せられたネモは、眼前に迫った牙を、右手の剣でギリギリで止めていた。
駄目だ。このままでは、本当にネモが殺されてしまう。
「ネモよお。俺には、お前があの女に、そこまで入れ込む理由がわかんねえんだけどよ?」
ルンフェスは、余裕の笑みを浮かべて、ネモに歩み寄った。
「お前、まさか、あの女に、惚れたとか言うんじゃねえよなあ?」
「……だったら、どうだというんだっ!!」
聞き間違いだろうか?
今、あるはずのないことが、聞こえるはずのない言葉が、聞こえた気がした。
だが、それは幻聴ではなかった。
確かに、私の耳には、私の頭には、私の心には、その言葉が届いていた。
「……おいおい、からかっただけなのによ。マジかよ。こいつは、本当に傑作だぜ! そうか、女に誘惑されて、目が曇っちまったわけか! 本当に哀れな奴だよ、お前は!」
ルンフェスの言葉など、もう、私の耳には入っていなかった。
「安心しろよ。あの女とは、ちゃんとあの世で会わせてやるからな」
次の瞬間、私は跳んでいた。
段差の高さなど気にも留めず、体の痛みもすべて忘れて。
両手で剣を突き出しながら、全力で跳んだ。
ぐさり、と、鈍い音を立てて、私の剣は、確かに、ヘルハウンドの硬い肌に突き刺さった。
そのまま、ヘルハウンドの背中に着地する。
激しい落下の衝撃。だが、手は放さない。獣の背中がクッションになり、いくらか衝撃が和らいだ。
「チェント!?」
「てめえ!」
2人が驚きの声を上げた。
そして、背中を貫かれたヘルハウンドが、ネモを放して暴れだした。
だが、意地でも手は放さない。
首を狙ったはずが、わずかに狙いが外れたせいで、一撃では、仕留められなかった。
それでも、傷は浅くはないはずだ。
私は、刺さった剣を、さらに深く押し込んだ。
咆哮が轟く。さらに激しく暴れ始める。
まだ、力尽きないのか。
そのしぶとさに驚嘆する。
そこに、拘束を解かれたネ
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