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ダンジョン飯で、IF 長編版
第三十三話  獣人
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ことを指して言っているのだと、すぐに分かる。
「で、お前達は、あの男の呪いを解くために迷宮を進んでいるんだろ? それって、つまり、呪いを解く方法を知ってるんだろ!? だったら私の呪いも解けるだろ!! 私に取り憑いたこの獣の魂を取り除いてくれ!」
 しかし場が静まった。
「ごめんなさい。」
 マルシルが口を開いた。
「それは、私にはどうすることもできない……。」
「えっ?」
 マルシルは、語り出した。
 魂にはまだよく分かっていないことが多く、よく卵に例えられると。
 普段は肉体という殻の中にある魂は、肉体が壊れると中身は漏れて、二度と元には戻らない。
 この迷宮では、殻の内側に頑丈な膜を作る術がかかっていて、だから肉体が多少傷ついても魂が離れない。
「今のあなたとライオスは、ひとつの殻に二つの中身が入ってる状態。……一度混ざった魂は、二度と元には戻らない。」
 そうはっきりと言ったマルシルの言葉を聞きつつ、チルチャックは、ファリンを見た。
 ファリンは、俯いている。同じ魔法学校に通っていた級友同士である彼女がそのことを知らぬはずがない。
「……え? えっ? じゃ、なんであんた達は、旅を続けてるんだ?」
 呆然としたアセビが焦りながら言った。
「えっと…、ひとつは…、兄さんをあの状態のまま放っておけないこと。次に出会った冒険者を殺すかもしれないし、殺されるかもしれないから。その前に私達でなんとかしたい。あと、…単純に今地上に戻ると黒魔術の使用で捕まっちゃうから。シュローは、今回のことを島主に報告するだろうし…。」
「そんな……、じゃあ…、私は、ずっと……。」
「でもあなたのおかげで、希望が見えた。」
「は?」
「だって、あなたは、どんな魔物と混ざっているのか分からないけど…、でもあなたの言動は人間そのものにしか見えないし、殺人衝動もない!」
 ファリンがアセビの手を握った。
「裏を返せば…、兄さんだって、迷宮の支配を受けなければ、元の人格を取り戻せるかもしれない。それが分かっただけで…私…嬉しい。」
「……はあ。」
「ほれ。」
 そこへセンシがリゾットが入った器をアセビに渡した。
「お前の期待とは少し違ったかもしれないが。これも何かの縁と前向きに考えてみてはどうかのう?」
「この迷宮の主は、私よりずっと古代魔術の扱いに優れてる。彼なら……、ひょっとしたら魂の分離に関することも何か知ってるかも。」
「何? ……まさか勧誘してるのか?」
「どのみち一人で地上には戻れないだろ? おまえ、名前はアセビとか言ったか?」
「それは通名だ。」
「それじゃあ…。」
「イヅツミ。私の名前は、イヅツミ。覚えておけ。」
 アセビ…、改め、イヅツミは言っ
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